丹後の精練場の事情

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過日、精錬工場の維持の問題を書きましたが、少し訂正があります。

丹後は精練済みの白生地がなかなか上がってこないのは、加工量がどんどん減るので操業日数を減らしているからだと書きましたが、事実は違いました。

丹後の精練工場の職人が昨年の春に一挙に3人辞めたそうなので、それがために1日に精練できる量が激減したのだそうです。

この近年どんどん生産量が減ってきたので、精錬工場もかつてはもう1つあったのですが、今は公的なモノは1つだけで当然ですがみんなそこに持ち込みます。

ここのところ1日の加工量の限界が1000反だったそうです。結構な数字だと思うでしょうが、かつての数量とは比べ物にならないほど少ないのです。

それが3人辞めたことで裁ける量が大きく落ちて、現在は1日500反しか裁けないそうです。

それがために未加工の数量が8000反ほど積み上がっていると言う話です。

単純にそれを捌くだけで2週間は必要ですし、そこにまた新しくあり上がった生地が次々持ち込まれるわけですし、急ぎのものなど全く対応できません。

仮に週5日操業に戻しても、年間操業日が50日くらい増えるだけで、いくら生産が減ったとはいえ、精練がスムースに出来るどころか貯まる一方です。

多分抜本的な解決策を考えているとは思うのですが、結局職人さんの高齢化と後継者不足から来る問題で、どの職種も同様の悩みを抱えています。

まさに困った大問題です。丹後は監督行政府は京都府庁ですから、京都府の伝統産業関係の仕事をしている役人にも真剣にこうした窮状を訴えて欲しいと思いますが、今の府知事も物知らずですし、京都市に対抗してにろくでもないパフォーマンスばかりしています。

伝統産業品を海外に売るための道を付けたりすることには補助金出したり熱心で、それも大事かも知れませんが、生産そのものが出来なくなったら元も子もありません。

もっと地に足着けて、基本を見直してほしいものです。

ただより安いモノはない?

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ある無料を宣伝文句にしている着付け教室のテレビCMが呆れるようなことを言っていますね。曰くただより安いモノはない。そりゃそうです。本当にただならね。

実態は行かれた方はよくよくお分かりでしょうし、言いふらされているようなことがずっとずっと続いていますので、ことさら今更言いません。

ただ後でしまったと思わないよう、色々な意味でよくよく調べてからにされることをお薦めします。

まあ洗脳されはまっている人に何を言っても無駄かと思い、FBなどでも投稿されているキモノ姿に何もコメントいたしません。

キモノ業界の流通業者に本当にひどい商いを平気でしている輩が半端な数ではないことは確かで、近年特にひどいのはとんでもない掛け率の値をつけて、平気で半額にしますなどと言う行き過ぎた値引き商法が蔓延して大問題です。

それもメーカーから借りたモノにそんなことを平気でするのです。

実は半額にしてもまだ普通の小売価格よりまだ高いのが通例です。もし気に入って欲しいのならそこから値切り倒せば良いのです。相手が降参するまで値切り倒すのです。
アホ共は結局自分の首を絞めることに気がつかないのです。嘆かわしいほどどうし様もない輩が同じ様なことをするのでどうしようもありません。名のある地方デパートでも室町のカス問屋が入り込むといきなり下品な商いをし始めます。信用をおとしめる様なことを平気でするその感覚が理解できませんが、裏で色々取引があるようです。

こういうことをしているから消費者から何処に行けば安心して買えるのかとか。上品で上質な良い物がリーズナブルなところは何処かとか何時も聞かれます。

買いたいけれど、信用がない、モノを知らない、センスの良い物がないなど、実質買える人を数多く取り逃がしているのが現実です。

私がいる間は出来るだけそのご要望にお応えできるようには努力しますが、私も70才になりますしいつまでもは出来ませんので、ご推薦できるところがあればお教えして差し上げます。

必要も無い、似合いもしないキモノや帯を高く買わされ後悔している人が数知れずいるというのは業界人として本当に恥ずかしく思うのですが、まあ買わされた方も少しよく考えられれば防げたということは言えます。

すぐに巻き付けてくる、良いお色目です、何でもかんでもお似合いです、ローンで人月にこれくらいで買えますとか言い続けるような女性のいるような店では絶対買わないこと、

自分がどんなときに着たいかと言う要望を伝えて、何でもかんでも紬を進めるような物知らずの所では買わないこと、などなど信頼出来ないと思うところでは、仮に買うと言ってもよくよく考えてクーリングオフが出来ますので、冷静になられれば後悔されることは少ないと思います。

これからもお困りのこと、お尋ねになりたいことがあれば遠慮無くどうぞ。



精練という大事な仕事

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過日白生地産地の苦境をお伝えしましたが、我々が使う白生地は、普通は白生地問屋から手当しますが、白生地となって京都に来るまでにはいくつもの工程があって、その分業が成り立たないと上質な白生地も出来ません。

ただ良い生地を織るにはまずは良質な糸の存在が欠かせませんが、これからして将来危ぶまれていますが、その他の付帯の仕事もどれも大切ですが、無くてはならないのが精練の仕事です。

お蚕さんは糸を吐きますが、その糸にはフィブロインという芯に当たる部分とその周りにセルシンンという膠質の不純物が取り囲んでいます。

この状態を生糸と言います。普通はこの生糸を機に架けるわけで、織り上がった生地は白生地独特のしなやかさや光沢がまだありません。これを生機といいますが、これを精練の工場に持ち込んで、その不純物を洗い流すのです。まあいわば洗濯ですが、そのために大量のお湯と苛性ソーダが使われます。当然ですがそこそこの人も必要ですし、この工場を維持するにはそれなりの加工量が必要なのは言うまでもありません。
わずかな量でボイラーを炊けませんので、数がまとまってからしか仕事が出来ません。

かつてはフル操業だったのですが、近年あまりに数が減ってきているので最近は週4日操業のはずです。それでも維持できないと臨時に休んだりしていることもあるでしょうから、精練で凄く時間が掛かって、急いで作って欲しい生地などがなかなか上がって来ないと白生地問屋がぼやいていました。

このように織り上がってから精練するのを後練りと言いますが、織りのキモノや帯などは先に糸を精練してから織り込みますので先練りと言います。

また白生地産地で精練するのを地練りと言い、各産地にそれぞれ精練工場があるのですが、余りにも生産量が減っているので、今後如何にして維持していくのかが直近大きな問題となっています。

他の産地の精練場と合同すればと言う人もいますが、実はセルシンはすべて洗い落とすと言うことではなくて少し残すのです。それが各産地によってノウハウが違うので、他産地の精練ではその独特の風合いが実現できないのです。

新潟県に五泉市というところが有りますが、羽二重や塩瀬、夏物の絽の生地などを織っている白生地産地です。そこの老舗の一番今でも生産量の多い機屋が廃業をすると言うことで大問題になっています。

それを聞いたときにすぐにそこの地練りのことを思ったのですが、ただでさえもうわずかに6軒しか残っていないのに、そこが生産止めるととても組合で精錬工場を維持することは難しいのです。案の定がらがらの状態のようです。
こんな時こそ行政の力が欲しいのです。公営の工場にしてしまうとか搦み方は色々ありますが、このまま手をこまねいていたら産地の崩壊の危機です。

精錬工場も、織屋も機械設備が必要ですが、それも老朽化しているところも多く、今回の五泉の機屋もその問題で悩んだ結果と言うことでした。

私の紋付きも、お客様にご紹介している物もすべてそこの最高の重目の羽二重でしたし、他の織屋ではどうやら出来ないと言うことで今ある在庫がなくなるとおしまいになってしまう可能性があります。

そうした機械の更新などに数百万からどうかすると数千万の金が掛かるとなると廃業を考えるのもやむをえないという状況なのです。本当に頭の痛い問題です。

将来生産量が回復する見込みがあるなら思い切ってリスクを張るかも知れませんが、今のままなら逡巡するのは当然です。

行政も一事業者だけを支援することも出来ないので、今までは組合単位で考えるのですが、組合が機能していないので、まさに正念場です。

今年は変化という意味で廃業が増えるような変化では困りますが、世代交代期でもありなかなが平穏な一年とはならないと考えております。

第3回泰三の会

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すでに告知はしておりますが、第3回目のミニ催事を、来る2月2日(土)、3日(日)

の両日に渡り開催いたします。時間は12時から6時まででございます。

場所は以前と同じ銀座東武ホテル

地下1階タブローの間です。

夫婦2人だけでお相手しますので、出来ればご予約を頂ければ幸いです。今回もすでに数名の方のご予約を聞いております。そのときにどんなモノがご覧になりたいのかなどをお知らせ頂ければ当日ご覧頂けるように準備いたします。

加工度の重いもの新規生産は今後だんだんと生産現場の現実に鑑みると難しくなってくるかもしれませんので、出来ればお誂えをして頂ければと思って今そのための資料づくりをしております。

かつての作品の中で私の推奨するモノの写真などをお見せして、変更をしてその方だけのモノをお作りすると言うことです。

すでにそうしてかなりこ主一考の作品をお作りしておりますので、今のうちならご注文あればできる限りのことはいたします。

勿論付け下げなども色替えなど自分のお好きなものにお作り替えもいたします。

遠慮無く何でもご相談下さい。


いよいよ不安です

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新年明けても何かと忙しくブログのアップがおろそかになっていますがお許しください。

フェースブックでは高橋泰三のアカウントで日記替りに色々なことを書いていますので、ご興味あればご覧下さい。

キモノ業界はいよいよ産地情勢が厳しさを増し、高齢化と相まって廃業が続いています。

先頃白生地の2大生産地丹後と長浜の昨年度の生産統計が発表され、愕然たる思いです。

丹後の生産量が28万反、長浜が3万6千反です。

最盛期は丹後が1000万反、長浜が180数万反です。

つまり丹後は最盛期の3%以下ですし、長浜はまさに2%です。

白生地は表地だけでなく、裏物や小物にも使われますガ、それをすべて入れてこの数字です。
まさに底なし沼状態ですし、高齢化と採算が取れないこともあって廃業が相次ぐのです。

近年丹後は実は大半は帯の賃機として成り立って来たので、西陣の帯は丹後無くしては織れないということなのです。ところが昨年から西陣の出荷量が激減しており、そのために丹後への発注も相当落ち込んでいるのです。
事業所の大半は夫婦2人だけでしているところが多く、しかも高齢者が多いので、この辺を潮時と見てどんどん廃業が増えているそうです。

ですから単に白生地の生産を危ぶむだけでなく、帯もかなり危ない状況となってきました。

生産数が減り、業者も減れば残ったところが一人勝ちだろうという人がいますが、真逆の意見です。

白生地は精練という工程を経て生糸で織られたものをある意味洗濯することで、蚕の吐いた生糸に含まれるセルシンという不純物を取り去り、そうしてしなやかで光沢ある白生地が出来上がります。

地元で練るのを地練りと言いますが、余りに数が減ると、毎日ボイラーに火を入れることが出来なくなって、売れている生地でもなかなか出来上がらないというジレンマに落ちいっています。

地練りが出来なくなって他産地に依頼しても、それぞれの産地の精練にはそれなりのノウハウがあって、同じような生地は同じ産地でしか作れません。
そういう意味で精練はとても大事な仕事ですが、行政に訴えても理解がなく、このままなら最悪白生地自体が織れなくなり、染めのキモノが生産不可能という自体になるとも限りません。
仕事を辞めないで残っても、そうした工程を経るためのコストがどんどん上がり、それがために廃業に追い込まれると言うことも考えられますので、残れば一人勝ちなどではなくて真逆なのです。

上質な生地を使ったキモノがリーズナブルな価格で販売されるような流通構造の構築と、真にキモノが分かる売り手のプロの育成しか、この問題を解決するすべはなさそうです。

といううなことを思わざるを得ない心配な今年の船出です。


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