ターニングポイント

カテゴリー:

色無地のお誂えの会を開催中でしたので、すこし投稿がお留守になっておりました。

今月も初めてのお客様がお見えになってご注文頂いておりますし、小さな店としてもこうし

た情報発信の大切さ、その効果を享受いたしております。

先日もある老舗呉服店の周年の大きな記念展示会があって、色々モノも揃うだろうから

そのことを私もSNS等で投稿させてもらおうと思ったら、そのお店のHPには案内が掲載されていなかったので辞めましたが、今までもお客への案内だけのようですので、新規のお客獲得に良い機会なのにもったいない話です。

どんなお客が来られるかわか分からないですが、それを恐れていては新規客は取れません。

お客の世代交代に合わせて適宜対応するためにも、やはり情報発信は怠りなくしなければなりませんね。

ところで先日来も産地の色々な情報を聞いたのですが、生産は落ちる一方かつ高齢化という流れに歯止めがかからず、

職人さんの平均年齢が70歳に近いという状況ですから、ハッキリ言って、もう後継者育成が可能な時期を過ぎてしまっているような気がします。

教えるのは体力が要りますし、高齢になるとそれがしんどくなります。

弟子を取るには年を取りすぎたということと、食わせる自信がないということでしょう。

若い人の参入が無いと、確実に高齢化がますます進み、健康上の問題が一番大きいのですが、あるところから堰を切ったように現場を去って行くでしょう。

大変残念ながら手遅れ状態のような気がします。

できるだけ延命を図って奇跡を待つとはいっても、需要自体がまだ細っていくのであれば、奇跡もおきません。

過日もある大手の着付けチェーン店の経営不安がささやかれていますが、着付けチェーン店というのは実は小売り業者であって、そこに納めているものは心配しております。

レンタル店は、特に観光地好調で、インバウンド需要で伸びています。

写真館などは競争が激化していて、収益は下がっていますが、それでもキモノを売っている店よりは好調のようです

今後もそういう動きが拡大すれば、モノづくりの未来は、インクジェット全盛となり、我々のような業者は食べていけなくて辞めていくことでしょう。

何とかしなければという思いと、もうここまで来たら仕方が無いという開き直りが相半ばしている状態のような気がします。

何とか質の良いものの需要を拡大することに尽きるのですし、頑張らねばとは思いますが、私自身の消費期限もそろそろかなという思いもするこの頃です。


西陣産地の未来

カテゴリー:

私は若いころから西陣の連中との付き合いがあって、染の仕事をしていながらも西陣の織物産業について、比較的昔からよく知っているほうだと思います。
京都はキモノと帯の一大生産地でありながら、友禅業界と西陣の織物業界との付き合いは希薄です。

私はいつもそれぞれバラバラにモノづくりをしている状況をおかしなことだと思っていたものです。

キモノと帯は一体ですし、どちらが勝つとか負けるという問題ではありませんが、西陣の人たちは当社のキモノが立派過ぎて帯が負けるだとか、帯のほうが立派でないと行けないなどまことにナンセンスなことを言う人が多くて呆れたものです。

キモノ姿を前から見ると当然裾模様に目が行き、帯の腹のところをよく見る人は少ないでしょう。後ろ姿は逆に帯のお太鼓が注目されますので、まさに表裏一体なのです。

当然キモノのことを知って帯も作るべきですし、キモノを作るものもそれに合う帯のことも考えるべきなのです。

ところが今でも西陣産地は、なかなか融和しません。まあ組合の理事長が原因でもあるのですが、西陣のものづくりは実は大変危機的でもあります。

ご存じかと思いますが、西陣という名前は織物業者が集まっている地域全体の漠然とした総称で、どこからどこまでが西陣ということは地図上どこにも書いてありません。

応仁の乱で山名宗全の西の陣が張られていたあたりに、織物業者が多く集まったという史実から、西陣といえば織物業者の総称でもあります。

西陣は帯だけでは無く、織のキモノ、ネクタイ、金襴、袋物などの織物製品を作るところが集まっているところですが、かつて私の若いころは正にガチャ万といわれる時代で、西陣は大儲けをしたところが多く、納税額のトップを競っていたような状況でした。

猛烈な受注があり、多ければ帯でも1つの柄で1000本も売れた時があります。当時京都でも一番良い仕事の一つで、織屋の代表者は、100%生まれ変わったらまたこの仕事がやりたいといわれていました。

ところが今から20年くらい前から、急激に消費が減退し、西陣で作られた帯を扱う専門の有名な問屋が、まさに堰を切ったように連続倒産し、メーカーは多大な被害とともに、売り先を失い、物凄い勢いで産地が疲弊しはじめ、メーカの倒産廃業が続きました。

織物のことを書き始めるとまた長くなりますが、要は型友禅と同じで、最初の型を作るのにお金はかかるけれど、数が売れたらドンドン儲かるという構造ですので、その数が売れなくなってきて、皆困ったわけです。

今では織屋の主人のほとんどすべては二度とこの商いはしたくないといっています。

最近の統計では、西陣産地全体の織物出荷額は最盛期の5%ほどになっていて好調なのは、お守り袋などをつくる袋もの屋だけだそうです。

帯だけで見ると多分最盛期の3%強くらいまで落ちていて、かつて2000以上の業者がいたのが稼働しているのは100社ほどで現実に生産を続けているのはその半分くらいだろうといわれています。

良く売れていた時代は、帯も西陣界隈でほぼ全量作っていて、あちこちから織機の音がうるさいほどに聞えていました。

多くは専属の工場をつくり、内製化していたのですが、生産量が急激に減り始めて、自家工場での生産が、非常にコスト高になり、持ちこたえることが出来ないという理由で、ほとんどの織屋が出機(外部の賃機屋に頼む)で生産するようになってきました。

発注して分だけその加工賃を支払うということですので、リスクは小さくなります。

そしてその最大の出機の存在地が丹後地方なのです。

昨年の秋、京丹後市が域内の織物業者の実態調査をして発表しているのですが、
その色々な数字を見て愕然としました。

丹後は白生地の一大生産地で、ほぼ色々な生地が織れるところです。

最盛期は組合統計でほぼ1000万反の生産がありましたが、昨年は31万反まで下がっています。

まさにそのこと自体も壊滅的な状況ですが、その統計を見ると、実は丹後地方の機の8割ほどが先染めの物を織っているということです。

先染めとは糸を先に染めたもので、それはまさしく帯であり、織のキモノなのです。

そしてその最大の発注先が西陣なのです。

白生地生産が極端に落ちて来たときに、その織機は帯を織ることが可能でしたので、帯の賃機屋に転向した個人業者が多いのです。

実はすでに高齢化が進んでいて、相当に安い工賃で織らせていたという事実もあるのですが、それがここにきて一段と高齢者ばかりとなってきました。

今織物業に従事している人は1500人余りしかしません(かつては丹後地方一番の産業でしたがね)が、何とそのうちの7割以上が60歳代以上なのです。

全体の8割ほどは個人営業者で、後継者のあるところはほとんどないというのが本当です。

単純にそうした数字を見る限り、これから先10年ほどで、急激に現場を離れる人が増えていくでしょう。

西陣の帯、キモノを作る人がどんどんいなくなってしまうということです。

織りの帯やキモノは前段階の工程もたくさんあって、京友禅と同じく分業制でなり立っていますが、その最後に製織するところがなくなれば、前段階の職人さんにも仕事がまわりません。
現にそうした分業制の中で、あと2人しかいないとか、本当に危機的なのです。

20年前あたりから抜本的な施策が必要だったのですが、私は個人的には行政にもよく話したのですが、役人に危機感が無く、何の手も打てませんでしたし、現に今でも何をして良いのかわかっていません。

勿論目端の効く業者の中には、西陣でも生産地を色々なところに求めたり、丹後でも新業種を探ったり、努力はしていますが、若年労働者不足は否めず(結局食べられないから従事しないのですが)、丹後産地の危機というだけでなく、世界最高峰の織物文化を誇る西陣という歴史ある産地の未来が全く見えないということです。

分業制の産業構造は多くの人たちで支えていますので、自分だけが残れるということは無いのです。

ですから頑張ろうという人がある程度存在してくれない限り、その工程を守れません。

良い帯がなければ、良いキモノも売れませんし、作れません。

今のままなら確実に高級な帯づくりは止まってしまいます。

良いものがあれば今のうちにというのもキモノだけではありません。

西陣は友禅よりももっと深刻なのかも知れないのですが、どうなるのか予想がつきません。神のみぞ知るということでございましょうか。

その統計を貼っておきます。


丹後.pdf


色無地お誂えの会

カテゴリー:

HPに告知しておりますが、9日から19日まで色無地お誂えの会を開催します。

染のキモノとして入門でもありますが、持っていると用途も広く便利なものです。

今回自分のお好みの生地に、お好きな色でおつくりします。

紋もいれて、仕立て代、裏地代、消費税も込で22万円でお受け賜ります。

色無地は買いに行ってもなかなか良い色もありませんし、生地もお好みの地紋のものがあれば良いですが、そうとも言えません。

出来上がりの色無地というのは、店頭に置いて色焼けし無いように、多くは含金染料というものを使います。
日光耐光度が高いので、皮の染色などに使われるのですが、微妙な色合いを発色するのが難しく、ですから色無地の出来上がりに良い色が少ないのです。

発色の良い酸性染料で染めるのならお誂えをするしかありませんが、出来上がってから自分のおもった色と違うということが少なくありません.

これは普通の流通だと、問屋の先に悉皆屋があって、その先の職人さんで染めるまでに伝言ゲームになってしまい、お客様の顔が見えないままお誂えすることになりますし、高くもなります。

安いものもありますが、生地が質が低かったりするのです。

当店は、流通上、直接職人さんに仕事を出していますので、どこも間に入らず、職人さんにお客さ間の情報を伝えやすいのです。

それでも当店は染め上がった時点で必ず一度確認をして頂いております。遠方の方ならお送りいたしております。

納得していただいてから御仕立てに入りますので、少しお時間頂いておりますが、自分だけの素的なお色目で是非お召になっていただきたいということでございます。

紋のことも色々とアドバイスさせていただいております。

銀座きものギャラリー泰三は確かに高額なキモノもございますがそんなものばかりではありません。

軽めの訪問着、付け下げ、小紋などでお求め安いものもございます。

見るだけでも全く問題ありませんし、所謂敷居が高いと思わないでお気楽においでください。

おキモノについてのご相談でもお受けします。

紬のキモノから入られたキモノ初心者も多く、中には婚礼も紬で構わないなどというとんでもない売り手がいたりして、あとで後悔されている方も少なく無いのです。

紬は今はちゃんとした生糸を使っているから婚礼に着ていって良いなどとまじめに言う業者がいて情けない思いをするこの頃ですが、
伝統文化を正しく伝えていかねばならないという思いの私としては、若くありませんが、染のキモノに関しての正しい知識を、より多くの人たちに啓蒙して行かねばなりません。

売り手としてのベテランもドンドン現場を去って行きます。

キモノ着用の背景にある伝統芸能、伝統文化のこともÝ9区知るものも本当に少ない現状では、私が世のために果たす役割も小さく無いと思い、老骨に鞭打って奮励努力しなければならないと強く思うこの頃です。

キモノ業界は各産地ともに大変な苦境で、後継者が育たず現在従事している職人さんたちの高齢化は進むばかりです。

最近は紬の売れ行きが鈍ってきて、織の産地の低迷も顕著となっています。

今あるデパートで開催中のバーゲンでも、全体が低調な中で、織のキモノはほとんど売れていないそうで、付下げ、訪問着の購買が多いそうです。

これにはいくつか理由があるように思います。

近年洒落もの中心の販売が続き、キモノ販売の知識のないものは、紬の生地の端の証紙頼りに

売ってきたということ多く、とくにチェーン店などでも初心者に、本来なら小紋や色無地をお勧めす

るほうが良いのに、いきなり普段着からということで紬を薦めていた傾向があります。

ところが最近はキモノを着たいという女性は徐々に都市部を中心に増えていますし、その年齢層

が若返っていくと、知らないからといっても、結構ネットなどで色々調べていますし、口から出まか

せの販売にはだんだん乗せられなくなります。

また最初に紬を買わされた人も、紬では色々なところに逆に着ていけないということに気が付い

て、いわゆる後染めのきもの、つまり染のキモノを購買しようと探されます。

紬を売りつけたような店の販売員は手描き友禅の工程さえ知らないようなレベルですし、正しくコ

ーディネートできるわけもなく、またそういう店においてあるものの品質劣化が著しく、流石に買う

に値せず、色々と勉強されながら探されているのです。

そういう方たちが時々私の店においでになり、付下げなどをお求めになります。

曰く欲しいと思ったものがどこにもなかった、こんな上品で綺麗な色のものはどこにも無かったと

か、実は本当のことですが、消費者が何を求めているのかが売り手にも作り手にも分からなくな

っているのです。

私は有難いことに直接販売する道を開いたことで、そうした動向をキャッチできますが、今のデパ

ートなどバイヤーが店頭にも立ちませんし、販売は問屋派遣のマネキンさんに任せているような

状況では、これからもっともっと消費者の志向とのミスマッチが大きくなって行くでしょう。

形の上で一番そういうことに敏感であるべきバイヤーがそれがわからないというのは嘆かわしい

の一言で、殆どのデパートが、相変わらず問屋の持ち込むものをただ店頭に並べるばかりの

無能、無策です。

これではとてもファッションリーダーにもなれず、大きな利幅だけ要求するがために、小売価格は

上がる一方です。

紬も調子に乗ってとんでもない値で売っているところがありますが、基本的に織物は同じものが

他にもあるということですし、価格もばらばらという情けない流通状況に改善が全く見られません。

作家モノと称する粗悪なものも増えており、少し着るとお尻のところが割れてくるような織物のをと

んでもない値で売っていたりします。

結局こうした消費者のことを考えないこの業界は作り手を殺しにかかっています。

ただまあ救いは、まだまだ私も含め真面目に良いものを作り提供したいという人たちが頑張って

いることです。

非常に前置きが長くなりましたが、そういう産地の歴史、伝統を育み次に伝えようと努力されてい

る方たちの最近の動きとして、消費者に直接そのこだわりを見ていただきたいということで、

定期的に作品展をされているのですが、その一つに、

「唯一無二之会」があります。

これは結城紬と大島紬の産地の若手が一緒になって切磋琢磨して始められた作品展です。

実は私も結城のこの人たちの作品展は何度か個別に私の店でも開催させていただいたのです

が、残念ながら販売力がなく、彼らは努力して今の形で続けておられます。

東京では銀座でいつも開催されます。

今回は2月13日(月)~18日(土)までで、銀座第7ビルギャラリーというところです。

詳しくはHPをごらんください。http://muninokai.jp/top

実は基本的にはこの会は業者向けということで、消費者の来店は専門店などのご紹介ということ

になっています。また購買も出来ますが、直接小売りはされませんので、それもお付き合いのあ

るお店を通じてということになっております。

ご興味ある方は当店にご連絡ください。店からごく近いところですので、都合つけばご一緒します。

なかなか興味あるものづくりをされていますし、私が断言しますが一見の価値はございます。

保護主義は衰退を生む

カテゴリー:

アメリカ第一主義と唱え、保護主義貿易をしようとする大統領が誕生しましたが、

保護主義は国が栄えるどころか、逆に衰退していきます。

自動車などはどこで組み立てるかということで、部品なども色々な国から輸入してなり立つ今の

現実では、自分のところだけでなにも出来無いし、協調なくして良いものは作れません。

キモノ業界でもかつて輸入生糸から国産糸生産を如何に守るかということで、結局役人のできる

ことは補助金行政で、天下りするためのろくでもない団体をつくり、本当の意味の産業育成など

何もできませんでした。

保護のために御補助金行政というのは経産省も同じですが、教養などからきしない輩にはどう守

って良いのかがわからず、結局自分たちに取って美味しい目のできる仕組みを作るということだ

けで、終ってしまい、産業自体は増々衰退をしてしまいます。

日本の養蚕農家は戦前の最盛期200万軒あったそうですが、今や400軒もありません。

そしてまだ減っています。保護行政が完全に失敗だったのです。

国内絹需要に対しての輸入比率は95%を超えているはずです。

ものづくりは競争状態にあって覇を競っているときのほうが、良く勉強もしますし、研究開発怠ら

ず、製品の質は上っていくのですが、全体のパイが小さくなり、保護行政に入ると、輸入品との競

争意識も薄れ品質は落ちていきます。

泰三のキモノに使われる白生地の糸は国産糸を使いません。

価格も高いのに糸の品質にムラがあるとのことで、先染めのものなどは別ですが、我々のような

高級な染のキモノを作るものには国産糸を使ったものは取引している白生地問屋も納めてきま

せん。

ただ当社も裏物には最高級の国産糸を使った製品を仕立ての時に使っていますし、評判は良いようです。

キモノ需要が激減していることで、それに頼ってきた国内養蚕がダメになってきましたし、人件費

が後進国とあまりに違うので、価格で太刀打ちでき無くなったということも原因ですが、輸出商品

として付加価値の高いものづくりをするというような発想があれば、もう少し生き残れたかも知れません。

人間でも競争状態で揉まれたものの方がいざとなった時に強いと思います。

今の教育では少子化で大事に大事に育てられるので、ピンチになった時に折れてしまう傾向にあるようです。

切磋琢磨という言葉を忘れたら人間の成長は止まります。

あいつに負けるかという克己心が今の日本人からなくなっていくような気がして心配ですね。

まあ取りあえず貿易などしたことのない大統領の恣意的な発言で右往左往させられるのでしょう

月別 アーカイブ