お蔭様で開店5年目に入ります

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寒中お見舞い申し上げます。寒い日が続きますし、花粉の飛散ももうすぐです。健康にはくれぐれもご留意ください。

さて本当に早いもので、勇気を奮って開店してからもう早丸4年が過ぎました。高級呉服製造卸業が本業である(株)染の聚楽の情報発信拠点として、業界初のアンテナショップを立ち上げましたが、その時は本社にとっては公私共に深い付き合いのあるお得意先が銀座に存在しておりましたので、大変立場としては難しい状況でした。

ただ私はその経営者を見ていて、呉服業界特有の丼勘定経営で、経営が苦しくなれば仕入先に金を払わないというような能天気な舵取りを続けているような状況ではいずれ必ず破綻するであろうし、そうなれば販売拠点を失うことは目に見えていました。ものづくりに一家言持つ私としては、そのこだわりを伝えるには、最終的には作った者自身が情報発信すべきだと思っておりましたので、そうしたデポジットを持ちたいという構想がありそれが実現したわけです。幸か不幸か私が予想したとおりその2社共に破産してしまいました。

その他にも銀座に老舗と称する呉服専門店で倒産の噂の絶えない、まじめな問屋は取引を一切停止しているようなところもあり困ったことです。これからは小さくとも銀座のまじめな専門店としての道を歩み、きもの愛好者のお手伝いができたらと思っております。

今の消費者はきものを良く知らないにしても、売る側はできるだけ質の高いものをお勧めし、後悔の無いお買い物をしていただくことが肝要です。それは決して高いものを売るということでなく、本物志向のまじめなものづくりをしているものをお勧めすることです。

ところが昨今の呉服店は一部のまじめなところを除き、すべてではありませんが言うのも恥ずかしいほどの勉強不足で、何が良い物かをほとんど知りません。とりあえず消費者をだましてでも、つまらない過剰なサービスを付けてでも売ることばかりに必死になっており、そのノウハウやテクニックを磨くことばかりに汲々としていると言うのが現実です。

やたらに京都などへのツアー販売をしているところ、聞いたことも無いような口の大きいとんでもない偽作家の作品を企画販売と称してどんどん推し進めるところ、すぐにローンを組もうとするところ、こんなところは私に言わせればすべて偽者です。自分がなにを薦めていいかわからないから、ものにこだわらないようないい加減な問屋と結託し、売れればなんでもありの姿勢です。

全国にチェーン店を持っているようなところはまあ仕方が無い面もありますが、問題は元来まじめな販売をしていたところまでが、代が変わってそんな売り方を真似てしまう、またそれがこれからの呉服店経営だと錯覚しているところです。何が専門店ですか。きものの事も知らず、きものを着ることも無く、きものや帯の製造工程も見たことも無いのです。

慨嘆に耐えませんが、そうした状況では本当にいいものを探している消費者に、本物志向のまじめな商品が流れなくなってしまいます。今そうした事態が急速に進行中で、結果ますますまじめなものづくりが減退しております。これはひとえに過去にそうした本物を販売してきた流通業者の甘い経営体質、後継者不足による高齢化などがその背景にあるのですが、生産者側にもそうした取引を甘受して来た事にも原因があります。

原点に戻り消費者の目でどうするのが一番なのかを真剣に見つめなおさないと、早晩この10年くらいの間に本物にこだわっている業者は消滅してしまいかねません。私が口酸っぱく言う、文化という側面をもっと業界の人間が認識しなおして欲しいのですが、流通業者側でそうしたことを言う人に最近お目にかかったことがありません。

西陣織、京友禅の生産の歴史はすなわち日本文化の歴史そのものです。多くの人のたゆまない努力と創意工夫の上に成り立ってきたこの大事な文化を今に生きる人間が次々壊しにかかっているのです。

先人の苦労に対する恩返しとして如何にこの大事な文化、技を次世代に伝承させるかという大切かつ価値ある使命を我々が担っているという認識の基、今後も心ある人と協力し尽力していかねばなりません。それには多少の犠牲やリスクがあってもそれを甘んじて受ける勇気と決断行動力が求められています。特に次世代に対する本物教育を怠り無く、夢希望、やりがいを与えていくことが大切です。

先日、銀座の店で販売したきものの仕立てをお願いしているところの息子さんが、仕事に対して熱が無いのか、将来に対して夢を持てないのか家で閉じこもってするという形の仕事が性格に合わないのか、迷いが生じて相談に来ましたので、私はその仕事の価値が分かっていないのだろうと思い、ぜひ京都にきものの生産工程を見に来るように諭したところ、早速一緒に継いでいる弟とともに見学に参りました。

結果自分が如何に大事で価値のある仕事をしているかということに気がついたようです。我々が多くの職人さんと共に作り上げた作品が、最終的に消費者の手元に渡る最後の大事な工程を受け持つ彼らがいい仕事をするかどうかで、その作品が生きるか死ぬかという本当にやりがいのある仕事だと思ってくれれば仕事に励みが出て、いい仕事をこれからしてくれるのではないかと思っています。そうした業界の次世代対する教育ということが、とりもなおさず消費者にいいものをお届けすることになり、きもののよさを啓蒙していくことになるわけです。

私に課せられた仕事は多岐にわたり苦労が多いですが、それだけやりがいもあり、今後とも微力ながらきもの文化のために尽力してまいります。いっそうのご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げます。

尚、このホームページは近々リニューアルを予定しておりますので、きものに関する話は春からまた再開しますが、2ヶ月ほどお休みさせていただきますのでご了承ください。4月から紋章の話を書かせていただく予定です。

高橋泰三   拝

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