第7回のコレクションを終えて

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今年も早いものでもうあと1ヶ月です。この数年と同じように色々な事が起きた1年でした。あまりにも多くのことが目まぐるしく過ぎ去っていくのでついこの間の事でも忘れてしまいます。

今や殺人事件は日常茶飯事ですし、詐欺事件も後を絶たず、役人の無駄遣いも何も変わりません。暗いニュースが多く、人をだまして儲けたやつや、まじめな人を踏み台にして偉そうにするような輩が跋扈する嫌な渡世です。

まあこんなことを書き始めるとまた友人に注意されますので、独り言はブログのほうで書くことにしましょう。

さて先月の25、26日に第7回のコレクションを開催しました。

今回坂東玉三郎丈のご依頼で製作させて頂いた歌舞伎衣裳のうち、吉田屋の

夕霧が最後のほうで仮祝言で使用する朱色の豪華な、蓬莱山に牡丹鳳凰文様の内掛をお借りし、私の新作と合わせて展示させていただきました。

おかげさまで多くの新しい方にご来場いただき、その衣裳だけでなくキモノ文化の真髄をご覧頂くことができました。玉三郎さんのご配慮に改めて感謝申し上げる次第です。

このホームページでもコレクションのことをご案内しておりましたので、それを見たという方も多く、いまさらながらにネット社会の影響力ならびに、玉三郎さんの人気に驚いた次第です。中には先日私も寄せていただいた島根県益田市の新しい芸術文化センター(通称名 グラントワ)での公演を見てその日の同じ飛行機で帰京したという若い女性もおられました。

歌舞伎衣裳はふだん遠くでしか見られませんので、間近にその実物を見る機会はほとんどの方にはありませんから、貴重な経験だったかと思います。しかも近年これほど豪華なものは製作されていませんので、ご覧になった方すべてその豪華さに目を見張っておられました。もうひとつの天守物語の富姫の衣裳も素晴らしいものですから、いずれまたお願いして皆様にお見せできればとも思っております。

ところでこの衣裳はもう多くの方がご存知ですから話しても良いと思うのですが、来年玉三郎さんがこだわって自分のものとしておつくりになった数々の衣裳の写真集が発刊されるのにあたりどうしても以前のもので作り替えたいものがあるということから、色々紆余曲折あって私どもにご依頼があり製作させて頂いたものです。この辺の事情はコラム欄に別に記しておりますのでお読みいただければ幸甚です。

ともあれ江戸時代から伝わる歌舞伎衣裳の伝統に触れられるとともに、それよりももっと古くからのものづくりの歴史を重ねるキモノの最高の技をご覧頂いたことは、いわゆる若い方への啓蒙という意味では大変意義あることだったかと思います。

こんなきれいなキモノ、これほどすばらしいキモノは見たことが無いと一様におっしゃっておられました。それはそうで、今の普通の呉服屋では私の作品だけでなく、最高の技を駆使した京友禅はほとんど置いておりません。ですからこんなキモノがあるということさえ多くの方はご存知ありません。流通上の種々の問題でそうなってしまい、このままではせっかく丹精こめて作ったこだわりのものをほとんどの消費者にお見せすることがかなわず、その結果そのもの作りを辞めなければいけないという馬鹿な事態になってしまいます。

次世代に伝える本物の技を継承するためにも、こうした一種の啓蒙活動、情報発信を今後とも続けてまいります。

若い女性が歌舞伎や日本の文化に触れることは日本人としてもとても意義あることで歓迎すべきことですが、残念かつだらしないのは、その日本の文化の代表であるキモノを扱うものがそうしたことをほとんど知らないという現実です。お稽古着に最適ですよと訪問着を一生懸命勧める呉服屋がいたといってある方が笑っておいででしたが、本当に恥ずかしいことです。

キモノのヘビーユーザーは何かのお稽古をなさっているような方が多いのですから、その場に必要なキモノを勧めるのなら、ある程度その文化に対する知識がないと、その情景が頭に浮かびません。キモノ業界でこれからも飯を食おうというのなら、そうした勉強をするのは当たり前ではないかと私は常に思っておりますがいかがなものでしょうか。

今年のコラムはこれで最後ですが、私の雑文をいつもお読みいただいている方に心より感謝申し上げます。どうも天候不順ですが健康にはくれぐれもお気をつけになり、お元気に新年をお迎えいただきますよう心より祈念いたしております。                     

 


高橋泰三   拝

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