第11回 金彩(その2)

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先月積み残しました、金彩の技法の解説を今月も続けます。

「砂子(すなご)技法」

 接着剤を塗った生地の上に、箔を細かく砂子状に振り落として接着させる方法で、 「振り金砂子」 とも呼びます。接着剤は筆で塗り、乾燥する前に手早く砂子を振り落とします。砂子は、竹筒または金属筒の一方に金網を張った 砂子筒 切り廻し箔 (金箔や銀箔を作る工程で、箔を規定の寸法に裁断するときに出る屑箔のこと、金泥を作る時にも使用する)を入れ、刷毛で筒の中の箔をもみながら落とします。砂子筒の金網の粗密によって、砂子の粒の大きさが決まります。筒の変わりに篩(ふるい)を使う時もあります。

 砂子技法は、蒔絵のように金銀が友禅の中にまるで浮遊しているような表現ができるので、挿し色を柔らかくしたりむっくりした味付けが可能となります。また、雲取りぼかしのような表現をするときは、接着剤に直接落とすのではなく、少し外側に落とし、、筆か綿花をちぎったもので掃き寄せるようにして表現します。砂子加工ができると、生地の裏からガーゼや手拭で裏まで浸透した接着剤をふき取り、表からは布や紙で砂子を軽く押え、生地に密着させて乾燥すれば出来上がりです。


「野毛(のげ)・切箔技法」

 切箔は、截(きり)箔とも書きますが、鹿皮の上で箔を竹で作ったナイフのようなもので大小色々な賽の目のように切ったり、細い糸状のものを作ります。(この糸状のものを野毛といいます)これを砂子技法と同じように生地に接着剤を塗布し、切断した箔を、水にぬらした細い筆先にくっつけて持ち上げ、それを接着面に丁寧に一つずつ置いていきます。

 野毛などは一本ずつか、何本かまとめて撒くようにする場合もあります。どのように置くかは職人さんの感性ですが、この技法を巧みに使った代表的な工芸品が、厳島神社にある 平家納経 です。

 この技法の難しいところは、箔を切る段階にあります。竹のナイフを作る段階からして難しいのですが、箔を切る時風が吹いてはいけませんので、締め切った部屋で息をこらして切る作業はとても大変です。 それに高価な技ですので最近ほとんどこうしたことをしているところも無くなりつつあるのが現状で、寂しい限りです。

 主な技法解説はこのくらいにしておきますが、この他にも、 もみ箔技法 たたき技法 すりはがし技法 盛り上げ技法 、等たくさんあります。

 しかし最近はスタンピングといって箔をフイルムに蒸着したものを熱転写させる技法が発達して、安い着物にはほとんどこの技法が使われ、或る意味ごまかしているのが実情です。いい仕事ができなくなるような背景が色々あり、職人技を発揮できないというのは本当に困ったことです。

 私の作品にはもちろん本格的な金彩工芸を施しておりますので、機会あればご覧ください。来月から、私が一番をこだわっている刺繍の話を始めたいと思います。
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高橋泰三(本名 洋文) 敬白
 

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