第6回 絞り染めの工程(その5)

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前回の解説で桶染めの難しさがお分かりいただけたかどうかはわかりませんが、多色の絞り染めをする場合、どうしてもなくてはならない作業なので、桶作りの職人さんは欠くべからざる存在なのですが、この間も訪問した桶やさんも、70歳に近い年齢で、その仕事の難しさゆえ、この工程に若い職人さんはゼロです。

 この先京都での生産は10年持たないのではないかと言う危機感を改めて持ちましたが、ここまで来るともうどうしようもないと言うのが本当のところかもしれません。桶染めが終わりますと、その桶を割り(桶から生地を出すのをそう言います)、染料が余計なところに入り込んでいないか点検した後、絞る時に使った糸を解きます。

 総絞りなどに使ってある絞り糸の分量は相当なものですので、解くのも結構面倒な仕事で、これを無理な力を入れたりすると生地が破れたりしますので注意しなければなりません。これは大体女性の仕事です。今ではパートの人が多いようです。この仕事が終わった段階で生地は相当縮んだり皺になっておりますので、元の生地幅に戻すために湯熨斗(ゆのし)をかけます。

 絞り染めの場合機会熨斗をかけるとせっかくの絞りが伸びきってしまいますので、必ず手熨斗で行います。写真を見ていただければ判りますが、2人一組になり絞りのところは弱い目にそうでないところはやや強い目にというメリハリをつけ蒸気を下から当てていくわけです。絞り染めの最終工程としてなくてはならない大事な仕事なのですが、実は大変危機的に職人さんの数が少ないのがこの工程で、写真に写っている2人は80歳を超えたお婆さんと孫娘と言う取り合わせです。もしこの手熨斗をする職人さんがいなくなれば絞り染めの工程は崩壊です。

 ある意味単純作業ゆえ若い人に一日中この仕事をしろというには無理かもしれません。また実際に仕事量も激減しておりとても若い人が結婚して子供を育てて行くには厳しい環境と言えます。多くの職場を見るたびにため息ばかりが出るような状況です。湯熨斗が上がりますと、このまま製品として市場に出て行くものもありますが、私の作品のようにこれから刺繍や金彩の仕事に回っていくものもあります。

 絞りの段階だけで重いものになるとゆうに半年以上かかりますので、当社の振袖の重い仕事は通算2年を要するものもありこれからそういうものの生産を続けていくことは相当厳しい状況には違いないのですが、何とか頑張って生きたいと思っております。今回で絞り染めの製作工程の話は終えさせていただきます。

 毎月お読みいただいている方には心より感謝申し上げます。今後ともきもの文化の啓蒙活動の一環として、きものに関する話を書き続けていく所存です。ご希望や疑問のことは遠慮なくお問い合わせください。来月からしばらくきものだけでなく伝統工芸一般によく使われる文様の話を連載してみたいと思っております。

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高橋泰三(本名 洋文) 敬白

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