風を読む(きもの業界はどうなるのか)

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暑中お見舞い申し上げます。

冒頭ですが、
銀座の店は、8月6日(水)から20日(水)までちょっと長い目の夏休みを頂戴いたしますのでご容赦ください。

さて、もう早八月ともなりましたが、温暖化の影響かどうかは分かりませんが、酷暑続きですし、時々とんでもない風雨に見舞われるなど、相変わらずの異常気象といえるでしょう。

先日ベトナムに刺繍の指導の仕事で出張しましたが、やはり例年に無く、今は雨季ですが、毎日ザーッと降る雨が例年に無く強いという感想でした。これはもう世界的な傾向かもしれませんし、年々大きな天災が今後増発し、多くの農作物に影響を受け、また人命が失われることになるのでしょうか。

アフリカなどでは、砂漠化が極端に進んでいますし、益々飢餓に苦しむ人が増えるといわれています。

原油だけでなく食料品その他が、一部の人間の計り知れない欲のために尋常でない高騰をしていることで、成長過程の国でも、予想外のインフレに見舞われ、国の経営に苦慮しています。

高度経済成長しながら何となく不安を覚えるような今の情勢は、人心の荒廃を招き、犯罪も増加します。

現に上海でも経済犯罪が多発し、自殺者が増えていますし、ホーチミンでも、引ったくり、掏り、置き引きなどの被害が急激に増えているそうです。

日本では諸物価高騰で、消費は急ブレーキがかかっており、政府は曖昧な表現しかしませんが、あきらかに経済は下降局面に入っているでしょう。

銀座を中心として都心部の土地バブルもどうやら雲行きが怪しく、秋以降不動産、建築業は大苦戦が予想されています。

そうしたいわば人心不安の状況下での、キモノというある意味不要不急のものへの需要はどうなるのか、その風を読むのは真に難しい情況であることは間違いありません。

評論家のように無責任にああだ、こうだと言うのは簡単ですが、私共のように、長い時間と多くの職人さんの労苦が在ってはじめて出来上がる物作りをするものにとっては、今後の生産計画はかなりの難問で、現に業者だけでなく、職人さんの廃業も増え続け、生産数も、特に手のかかるものは激減情況が続いています。

産地側だけで考えると、今の状況は悲観的にならざるを得ませんし、流通業者の単純な情報下では、ものづくりの未来に夢が持てないというのが偽らざる実態でしょう。

私は京都ではもの作り、東京では日本を代表する消費地の銀座で、アンテナショップの展開をしていますから、両方の情況を客観的に見られる立場におります。

一言で言えば今後の良質なものづくりは、現況の推移では、非常に危機的であるということは変わりませんが、消費地での購買喚起にはやるべきことを正しく実践できれば 悲観するような情況ではないと思います。

当然の話ですが、物作りの文化が続けていけるかどうかは、新しく製作したものが消費者の眼に適い、購買されていかなければなりません。

キモノは和文化と共にあるといえますので、茶道などのお稽古をする人が減れば、それだけ着用機会は減り、需要も減るということも言えますので、私は、和文化崩壊はキモノ産業の未来にも暗い影を投げかけるという危惧を持っています。

確かにそういうお稽古事をすればキモノを着る機会は必然的に増えるので、キモノへの愛着も湧き、その分需要も増えるということは間違いありません。

ただ最近私はちょっと考えを改めました。

キモノは一つのファッションであるという側面も持っているわけで、単純にキモノを着たい、買いたいという人が増えてくれれば良いということは言えると思います。

別に和文化云々は別にして、洋服を着るかキモノを着るか、という選択肢の一つとして捉えれば、違う道が見えてくるかもしれません。

普段は洋服ですが、非日常的な装いとしてキモノを着てどこかへ行くというようなライフスタイルを実践されている方が確実に増えていますし、そうすることでキモノへの愛着、知識も増えていくということでしょう。

当然そうなればフォーマルな席にもキモノでお出かけになりますし、そうした人たちにキモノというファッションのTPOをはじめ、その服飾品としての秀逸さを正しく伝えることが出来れば、購買も伸びてゆくことだろうと思います。

嫁に行くときに持たせてもらったキモノが、仕付け糸そのままで、いざ着て見ようと思うと、カビが生えていたり派手過ぎたりで着られないということは良くあることですが、私共はそうしたきものをリメークして、その方にお召しいただけるような提案もさせていただいております。

お嬢様がおられるときは、仕立て換えしてお譲りになられればいいと思いますし、お家に伺い、その辺のことを見極めるお仕事もさせていただいております。

まずは基本は着ていただくことですし、如何にその方を美しく着飾れるか、そうしたお見立てが大切です。

ある程度年齢を経ると、どんな色目や柄いきがお似合いになるか、ならないかということがはっきりしてくるにも関らず、呉服屋に行って手に取るものすべてお似合いです等というような薦め方はかえって購買意欲を削ぎます。

私自身もキモノを良く買いますが、そういう言われ方をすると、買う気がしなくなります。

顔映りというのは大切で、どれが似合うかはっきりとアドバイス差し上げることは売り手の基本だろうと思います。それが出来ないのは、結局自分がキモノを買わない、着ない、持っていないからでしょうか。

より易しく着られる提案も含め、着る方の立場に立った対応は当然です。

自らがおしゃれ心を持っていないと人に薦めることは難しく、より一層売り手の勉強が問われます。

和文化への回帰という風潮は確実にありますし、キモノをこれから着ようという人も確実に増えていることは間違いありません。

そのトレンドの腰を折ることなく、購買に結び付けていくのは売り手にかかっており、そのことが生産を支えます。

何でもいいから売れればいいと言うような売り方は確実に淘汰されますし、センス良く、かつ良質なものをお薦めするには、それを作る人への情報伝達も大切です。

ただ職人さんの高齢化はとまらず若い人の参入が、作り手側では皆無に近いので、今作れるものがこのままでは10年以内に出来なくなるというという悲しい実態は変わりません。お嬢様にいい物をとお思いの方には、5年以内におつくりになられることをお薦めしているのですが、これはあながち嘘ではありません。

産地側だけで見るとキモノ産業は壊滅的で、悲観的にならざるを得ませんが、消費地でお客様に接し、色々とお話を伺っている限り、まだまだキモノ業界は本来やるべきことをしていないということが良くわかり、需要振興の可能性はあります。

結局そうしたことを真面目に実践できる人たちが、売り手、作り手がお互い協力し合って、細くとも長く続けていければまだ未来はありますし、そういうところだけが残っていくということに帰結するでしょう。

消費者に嘘をつかない、着る立場に立った商いが出来るところが最後は残っていくことでしょうし、そうなるかどうかは消費者の動向にかかっていることも確かです。

種々の情報を発信するマスコミなどの責任も一段と大きいということでしょう。

キモノが好きで、キモノの仕事をすることが楽しいと思える環境を保持できるかどうかは、今従事しているものの責任だと思い、微力ながら尽力したいと思っております。

今後ともキモノを愛でる人がもっともっと増えて行くよう、私共もより勉強を重ね、銀座という街に相応しいアンテナショップとして皆様のお役に立てるよう精進いたしてまいります。

酷暑続きの毎日ですが健康にはくれぐれもご留意ください。


高橋泰三   拝

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