黒留袖が揃いました

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今全般にいわゆる絵羽物(キモノの形になって販売されているもの)の需要はかなり落ち込んでいますが、その中でも、振袖は以前に比べると子供の数も減っているので当然その販売数は減ってはいても、確実に着るというための需要がありますから、極端に落ちるということは有りません。

今一番落ち込んでいるのはかつて一番売れていた訪問着でしょう。
訪問着にはフォーマルなものから、洒落物まで幅広く、価格も千差万別です。

ただ付下げなどに比べると、平均的には格は上ですし、価格的にも高いものが多いと思います。

社会環境が変わり、高級な訪問着を着る機会が減ったということ、キモノ初心者が増えて、普段着的需要が増えたがために訪問着を着ないなど、種々の理由もあって、特に皮肉な色の濃い地色の、我々から見ると本当になんともいえない良い色だというようなものが、今は売れないのです。

つまりそれを着こなすだけの経験がない、まだまだ板についていないということと、全体的に若返りで、そういうものを着てもおかしくない年齢になりながらも、つい明るい色に目が行くということもあるように思います。

しかし訪問着よりももっと早くに、生産が激減してしまったものがあります。それは黒留袖です。

かつて戦前などは黒留袖はミセスの第一礼装として、あらゆるお祝いの会にお召しになったものですが、時代が下がって、婚礼における、親族と仲人の夫人の衣装として定着していました。

良く仲人を頼まれる方は何枚も黒留袖をお持ちでした。

それが特にバブル経済がはじけた後あたりから、日本の社会の習慣が変わってきたということでしょうが、かつてのような立派な披露宴ではなく、いわゆる地味婚などというような、自分たちだけで祝うというようなスタイルが増え始め、それも仲人不在というようなことがまるで当たり前の様になってきたがために、黒留袖への需要は極端に減り始めました。

しかも親族であっても、色留や訪問着を着ていくような事態で、服飾文化の中でもっとも守られるべきフォーマルの行事の着用ルールが乱れています。

当然ですがその第一礼装たる位置づけの黒留袖は、需要は落ち続け、各産地も生産は激減状態です。

そのため無地物のフォーマル用に高級な生地を生産していた、長浜など(いわゆる濱縮緬)は大打撃となり、かつてはその生地が最も生産が多かったという一越縮緬の生産などは今では月に100反もないような状況です。


当社も先代のころ高級な黒留袖の元祖とまで言われたように、戦後いち早く黒留袖の手描き友禅の高級なものの生産を始めています。

その後は刺繍を駆使した豪華な黒留袖では自他共に認めるナンバーワンのものを作り続けて来ました。

しかし今のような事情で本当に注文が激減し、やはり致し方なく減産をしておりましたが、ここの所ちょっと風向きが変わって来たように思います。

高級な黒留袖への注文が毎月のように入るのです。

考えてみるとこういうことだろうと思うのですが、まず他社がほとんど黒留袖の生産をしていない(当社は減らしながらも続けて来ました)、特に高級なものに関しては本当に市場に少ないということはあると思います。

実際下の写真のような高級な総刺繍の黒留袖などどこも作っていません。

そして最近団塊世代の第一子の婚礼が増えているということ。
母親としてはやはり黒留袖を着たいけれど、お嫁に持ってきたころのものはさすがに赤くて着にくいのでどうしようかと迷われるのです。

それではお母様のものがあればそれにしようかと思ってみてみたら、黒の色が変色していて着られない。

散々迷って貸し衣装なども見たがとんでもないレベルで、とても着る気がしない。

それで最後にやっぱり一枚ずっと着られる良いものを買いたいと思われるのだろうと考えられます。
同じ買うなら良いものを買おうということでしょう。
だからそういう注文のときに本当にもう余り時間がないということが多いのです。


黒留袖はお母様のころのものは三度黒という京都独特の染め方で作られているので(私のブログの中のキモノの工程解説の中にあるのですが、また改めて別のコラムで書きます)、保存状況にもよるのですが、黒の色が変色していることが多いので、お母様のものは着られないことが多いのです。

当社は他社が生産を止めても今でも一度も生産を止めたことはありませんから、2、3年前から
私の予想より多い注文があって、品薄となり、やや増産していました。

それがようやく揃い始めており、今銀座の店にも充実しております。
銀座で黒留袖をこれだけもっている専門店はほとんどないでしょうし、ぜひ一度ご鑑賞下さい。

実に繊細で洗練された刺繍の技で表現された泰三の黒留袖は、他の追随を許さない最高のものであると自負しております。

服飾における第一礼装のものがなくなるということは、ありえない話ですし、やはり一枚は黒留袖をおつくりいただきたいのですが、私がいつも言いますように本当に良いものはこれから先10年以内には完全に作れなくなる可能性が高いので、次世代に継承という意味もこめて、今のうちにお作りになることをお薦めしております。

婚礼のスタイルが最近は本当に様々で、華やかな世界に生きる芸能人でさえ、いつのまにかくっついて、いつの間にか子供が出来て、入籍済ませておしまいというようなことがまるで日常茶飯事ですし、フォーマル需要というものがかつては物販の中で大きな柱であったのですが、今はとてもそういうことは望めません。

かといって全然ないというわけでもないので、本当に生産調整が難しいのです。

間際になって探されるので、お誂えも出来ませんし、今後とも黒留袖に関しては良いものに出会うことは極端に少ないでしょう。

いつお子達が結婚されるか分りませんが、早い目に誂えをされれば、今はもうないような良いものをおつくりできますし、そうしたこともいつでもご相談下さい。

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