邦楽界も前途多難

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私は40歳になったときに、清元節(きょもとぶし)のお稽古を始めました。

私の師匠、2世清元寿美太夫さんは、京都に出稽古に来られますから、京都で始めたのです。
当時は清元をお稽古している人は、キモノ業界でもそこそこおられましたし、それ以外でも有名な方が長い間お稽古されていたものです。
京都のお稽古場にも、故山口伊太郎氏や故永楽即全氏など親分が居られて、私も色々と人生についてお教えいただいたものです。

清元節は江戸時代後期に確立した邦楽の中では比較的新しいものです。
富本節(とみもとぶし)の或る名人が独立したもので、それが初世清元延寿太夫です。現在は七世です。
富本節は常磐津節(ときわずぶし)から、常磐津節は、豊後節(ぶんごぶし)から、豊後節は一中節(いっちゅうぶし)から派生したもので、この一中節は実は京都で起こったものですから、私が清元節をお稽古するのも、あながち縁がないというわけでもありません。

清元は高い声を特長として、長唄、義太夫などの要素も取り入れた近代的な曲調で、歌舞伎にも使われるようになって爆発的な人気を博しました。それを妬んで、初世は暗殺されたとも言われています。

当然江戸では清元をお稽古する人が増えるのですが、この師匠というのが大体女性が多かったのです。小唄や清元の女の師匠というのは、元芸者だとか色っぽい人が多かったので、それもあって江戸の商人が習いに行っていたものです。

さて現在、私がお稽古を始めてちょうど20年たって、もう日本が変わったとしか言い様が有りません。

小唄のひとつ出来る人もほとんどなく、何が義太夫で、何が常磐津で、何が清元で、そして長唄かなど、まず分る人は皆無に等しく、私はそういうことの解説者としてどうも貴重な存在のようです。

という訳で、お稽古する人も本当にほとんどなく、私は今東京に月のうち半分以上いますから、神楽坂の師匠の家のほうにお稽古に寄せていただいているのですが、男の弟子は私一人です。

幸い京都のほうに2人男がいますが、大体女性の弟子のほうが多いというのが、どの師匠のところでも同じです。

これは何も清元だけではなく長唄などでも同じです。

要するにこうした邦楽の黎明期とはまったく今は違って男性の弟子が激減してしまったのです。
女性の弟子といっても大変高齢化してきましたし、若い女性の新しい弟子などほとんどないというところばかりです。

また清元は今でも女性のプロのほうが多いのですが、そういうところのお弟子の数も激減しており、とても食べていけなくなっているのです。男性のプロはまだ歌舞伎や、踊りの会の地方(じかた)として使われることはありますが、女性はやはり弟子がいないと食べるのが難しく、今大変な問題となってきました。

当然ですが後継者もなくなり始め、プロ自体の高齢化も進んでいます。

まあ歌舞伎が或る限り、無くなることは無いにしても、清元節という伝統芸能が極端に先細りになることは間違いありません。


歌舞伎は見ても、その地方まで良く知る人は少なく、邦楽の種別やその差を良く知る人もほとんどいません。近年歌舞伎ファンになった人はなおさらです。

そういうことが分ればもっと歌舞伎を深く見ることが出来るので、ぜひ興味を持って勉強してもらいたいと思いますし、いつでも私にお尋ね下さい。

クラシックは良く聞いても、日本の伝統芸能を知る人が減るということは、やはり日本として考えるべき大切な問題です。


清元とはそもそも何であるかというような啓蒙活動は当然ですし、他の常磐津(ここはもっと弟子が少ない)などの若い連中が危機感を持って、その普及などに努めないといけません。

かつて大阪を中心とする義太夫節は東京では本当に知る人も少なく、素浄瑠璃(人形なしで義太夫節だけを語る)の会でもガラガラだったのですが、住大夫さんや多くの人がその啓蒙活動に努め、今では国立劇場での公演の切符が取れないような状況です。

今の若い人には邦楽に興味を持っている人も少なくないのですし、知らないことを教えていくという努力を重ねれば、再びお稽古する人も増えて行くかもしれません。

ただ昔がどうだっだからということを前提にすると難しいのです。

これは単に邦楽界だけではないもっと大きな話になりますが、和文化に馴染みのない次世代に、その良さを伝えるのは至難の業ですし、かつての価値観でそのまま押し付けようとしても難しいでしょう。

もっと大きな話で言えば、今、要は大きな世代交代期なのです。
次の世代のための改革は、次の世代が中心になって進めるべきなのです。

我々団塊の世代は、過去の文化の継承を怠り断裂させてしまったという責任を感じるべきだと考えていますし、今からでも勉強してその良さを子供たちに伝えることは出来るとは思います。

そして若い世代がそのことをまた次の世代へと継承できるようなお手伝いをしてやればと思うのです。
若い人たちが正しい方向に改革できるような礎はつくり、実際は若い人たちに任せていくということが、大変重要で、そのためにどうするかということが問われているのです。


邦楽もオペラなどと同じでおなかから声を出しますし、健康にも良いのです。
誰か私と一緒に清元のお稽古いたしませんか。

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