普遍の美

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キモノの上物、本物の生産がどんどんと減っていく原因に関しては、もちろん市況に関係していることは否めませんし、これほど長くデフレ経済場慢性化している現在では、何もキモノに限ったことではありませんね。

高額で、不要不急なものは、本当に必要な時にしか需要が出てきません。

かつて高級呉服は、いわゆる富裕層の消費アイテムの一つでしたが、それは着る機会が多くあったからでしょう。

結婚式では最近仲人がいないのが当たり前のようになってきたので、黒留袖の需要が大きく減退しました。

それなりの立場の奥様はど何度も仲人を頼まれることが多いので、どうせ要るからと言って呉服の展示会で黒留袖を買った方も数多かったのですが、今は花嫁、花婿の母としてだけの需要ですから、式が決まって、ああだこうだと言っていて急に欲しいというような方が多く、私共でも2週間先の婚礼で飛び込んでこられた方がおられました。

こうした環境の中で、従来からの上物を作り続けること、揃えていくことは確かに難しいことかもしれませんが、そんな中でも売れ続けて行くものがあるはずです。

現にキモノだけではありませんが、高額でもずっと定番のように売れ続けているモノがあります。
時代が移り変わっても、形も変わらず売れ続ける高級な腕時計とか、装身具など意外とあるものです。

なぜかということを考えると、変わらないから良い、あるいは変えようがないほど洗練されているということなのだろうと思います。

勿論材質も製造方法も最高のもので、性能もよく、実際どこを変えても良くないというようなものがあるものなのです。

これこそ本物ですし、それを良いと思わせる普遍性、普遍の美があります。

キモノの場合、柄のあるモノは同じものを作り続けるということは、高額品では御法度ですが、そのモノづくりをする者のベースのセンスがあります。

泰三の縫い箔を中心としたモノづくりにはそれなりの個性がありますし、名を知る人はすぐにこれが泰三の物だというセンスを感じるでしょうし、真似をしたものはすぐに見破られてしまいます。

手前味噌ですが、親子二代で培ってきたセンスが本物だからここまでモノづくりしてこれたのでしょうが、

他のモノづくりにもいえますが、それは本物とはシンプルなことが一番で、出来るだけ余計なものをそぎ落としていくということが大事なのです。

シンプル イズ ベストなのですが。これが分かっているようでわからない人も多いのです。
ややもすると、すぐに柄を増やしたりしてしまいがちで、あるいは多彩にして豪華さを出そうとかしてしまいます。

またもう一つ難しいのは、普遍性があるということは、あまり大きく変えてはいけないという側面もあるので、その中で少しは変えることのむつかしさを感じ、あるいは作り手そのものがなんと無く飽きてきて、ガラッと変えてしまうことがあります。

そのことが新境地ということで、一段と評価される人と、全く逆の評価を受ける人がいます。

私は日本画が好きなので、若い頃から日展を初め、多くの日本画展を見てきましたが、どんな作家が流行るだろうとか、どんな絵が売れるだろうということはある程度わかります。

今の流行作家がどんな画風をもっているかということもある程度知っていますが、ある時突然その流行作家の画風が変わることがあります。

年を取って新境地の開拓で、食べるということから離れて、自己実現の欲求を達成しようという人の意欲的な作品は、それなりにわかるのですが、そうではなくて、自分自身が勝手に自分の絵に飽きて、変える人がいます。

しかしそういう作品はほとんど評価されることなく、せっかく名が出ていたのに、それで終わってしまった人も数多くあるのです。

この人はきっと真の美とは何かを理解していなかったのだろうと思います。

たまたま今まで描いてきたものにそういう美を感じられたのに、自分が分かってい無かったということでしょうか。

同じ題材でもどんどん極めていくというのが本当で、そうであれば飽きるということはないはずなのです。

奇を衒った作品で、底辺に真の普遍性の美を感じないものは、必ず消えてしまいます・

自分の作風を確立し、それを極めていく中に道が開けるというのが本当です。

作り手のそうした思いを受け止め、あるいは指導アドバイスしてくれるパトロンがいれば一番ですが、キモノ業界などにはそういう存在がほとんどいなくて、本物を知らないからすぐに目先を何か変わったモノが無いかと変えてしまう人がいますが、結局少しは違う需要があっても、それが本物でなければ続きません。

消費者はそうは思っていないのに、提案する人が自分で勝手に飽きてしまうというのは不幸なことなのです。

本物のわかるお客様に本物が届けられないというような不幸なことが無いよう、間に立つ者の見識が一段と問われることでしょう。

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