小物もない

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私は仕事柄当然ともいえますが、自分自身がキモノを着るのが好きなので、若い頃からこつこつと作ってきたキモノは今では50枚以上あると思います。

お稽古をしたりしていましたのでキモノを着る機会も多かったこと、また務めて多くの会合にキモノを着ていったので、それなりに数も必要だったのです。

まあそんなわけで、私の店でも男物をお世話することがあります。

私はお洒落に、かつ品よく着ていただきたいと思い、初心者にはお召しの上下からお勧めしているのですが、最近とみに困ることがあります。

男物は色々と決めなければならないことがあります。

長着と羽織の生地が決まれば、長着の裏地をどういう色にするかを決め、既存の物で無ければ染めることもあります。大体市販の物は決まった色しかないので、それこそお洒落な裏を付けようと思うと染めるしかありません。

また羽織には羽織裏が要りますが、これが困るのです、粋でお洒落な一枚ものの額裏(一枚ものはそのように言います)は、今探してもなかなかありません。

私が持っている羽織の裏には、色々な柄があります。

かつては浮世絵風の色っぽい物もたくさんあったようですが、そういうものが姿をけし、型物のやすけない物はたくさんあっても、洒落た柄を探すのは至難の業です。

たとえば私の物のに、ソラマメが大きく二つ絞り加工で並んでいるものがあります。

これは商売人はマメマメしくという洒落ですし、これも絞り染でナマズの柄がありますが、これはナマズというのは地震を予知することから家内安全という意味と、ナマズは夜行性で、夜目が効くそうです。

夜の目が良い→夜目が良い→嫁が良い ということで一族の繁栄を願うという意味で江戸時代などにはよく使われた柄だそうです。

この間お客様にお世話したのは、瓢箪の横の方に小さく馬が一頭いて、つまり瓢箪から駒などという洒落です。

こうしたさびのきいた洒落た羽裏を探そうと思っても本当に少ないのです。


鳥獣戯画だとか、富士山だとかならあるのですが、それも加工方法がレベルの低いものが多く、決していいとは言えません。

こだわればこだわるほどものがありません。昔はよく売れていたので、色々業者も知恵を絞ったのです。

男物の羽織は作る人が本当に少ないので、今度は羽織の紐にも困ります。

これも定番のようなものばかりで、ひねりのきいた良い色目の物が本当に少ないのです。

それに襦袢がまたいいものが少なく、その衿が良い色があまりないので、これもまた場合によっては染めます。

草履の鼻緒も洒落たものが無いので、私は全部誂えます。


このように、表地が売れないと、今度は小物も売れませんから、売れ筋の物しか作らなくなり、キモノをよく着る人には選ぶモノが無くなり、全部誂えるということになりその分高くつくという結果になるのです。

全体の生産や販売が好調だとその中で洒落たものとか、思い切ったものを作れるので、キモノの達人を満足させるものもあったのですが、最盛期のたった数パーセントの生産しかない様な状況では、キモノにこだわる人ほど満足できるものが無い、昔の物の方がはるかに良いと言われて、実際売るものが無くなっていきます。


そういうことに気が付いて少しはお洒落なものも作るところもあるのですが、いかんせん販売が伴いません。

専門店は男物の場合長着だけでなく是非羽織もお作りになるようお薦めしてください。


昔は男は羽織を多用したので、羽織専用の生地、羽尺(もちろん女ものも)がありましたが、近年は羽織が売れないので、結局長着を羽織にしていますので、生地が余ります。

そして裏物もいいものが無くなっていきます。

誂ればいいとはいっても、そのことをよく知らないと誂え注文も取れません。

売り手がもっとキモノをよく着て、TPOだけでなく、そうした小物のことなども勉強しておかないと、困った事態がおきるのです。

キモノで飯を食う人はキモノを着るという基本を忘れないでいただきたいものです。

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