ネット販売の功罪

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キモノや帯のネット販売は近年非常に増えてきましたし、現実にその販売額も増えているようです。

当然ですがその質感や色などはネット上ではわかりにくく、特に先染めのキモノ(染のキモノ)は難しいですね。

最近は注文された方に一度送って、納得されてから販売するというところもあります。

地方の専門店の力が無くなってきたので、こうした販売でキモノ市場が活性化するなら有難いことなのです。

ところがキモノ業界におけるネット販売にはいくつもの問題があります。

普通ネット販売や通信販売は、作り手がダイレクトな流通を構築するためにすることが多く、問屋などの流通をカットした、今では当然のような販売形態です。

あるいはメーカーから数多く買い取ることでコストを下げ、ネットで販売するという業者もあります。

しかしながらキモノ業界におけるネット販売は、他業界の常識とはいささか趣が違います。

キモノや帯はいわば耐久消費財で、大変長持ちをします。保存状態さえよければ50年くらいは着用に耐えられます。

それにあまり流行がありそうで無いので、古いキモノを着ても、それほどの違和感がありません。

それがために、流通業界でも古くからの在庫を抱え込むこととなっています。

アパレル業界では、流行が激しいのと、値崩れを防ぐために、かつては焼却したり廃棄していたようですが、キモノ業界では、売れ残ってもそのまま在庫として持ってきました。

在庫が増えたもう一つの要因は、キモノ業界が委託での商いが大半となり、一つのモノを決めるのに、10も20も品物が必要となって、各問屋の在庫が膨れ上がったのです。

右上がりの良い時代はそれでも何とかやっていけたのですが、近年販売数、販売金額が下がり続けたために、在庫が積み上がり、その在庫を金に換えて経営しようとするので、仕入れも減らし、そのことが生産減の大きな原因です。

今時、なかなかそれなりに買取してくれるところがそうはありませんから、致し方なく現金問屋とかに安くさばいてしまったりしていますし、また一時期問屋が次々倒産したがためにその在庫がそうしたものを買い取るところに流れてしまいました。

キモノ業界のネット専売業者の多くは、その滞留している流通在庫に目を付け、そうしたところから商品を手当てしていますから、当然ですが通常の値よりは安くなるものが多く、確かに中には値打ちモノもありますが、それはよほど知らないとわかりません。

織物は同じものがいくつもありますし、こういうところに出てくると、ハッキリ言って値が崩れますし、生産者にとっては非常な迷惑です。

どうかするとまだ生産中の物が心無い問屋のためにこういうところに出てしまうことがあります。

滞留している在庫が消費者の手元に渡っていくことは悪いことではありませんが、そのために、作り手が疲弊するのならそれは決してこの業界にプラスにはなりません。

もっと嘆かわしいのは、こういう業者に委託でものを持ち込むところがあるという現実です。露出度の多いところのものはほとんどがそうです。

結局自分の首を絞めているということなのですが、それほど疲弊しているという顕著な例です。

もう一つ問題なのは、総じてそうした業者はキモノのことをよく知らないで販売しているという事実です。

ですから、通常売価というのも極めていい加減ですし、その商品の解説がでたらめなものが多いのです。

ある帯の解説をするのに、その帯屋がHPを持っていたら、そこからその帯屋の特長の解説をぱくってそれを商品解説にしていることが多く、まったくその商品とはかけ離れたことが書いてあったりします。

情報発信度の高いところはすべてその対象となっています。
私のブログもよく読まれているようです。

ネット販売は地方専門店の販売力の低下からくる需要不振を打開できる手段ではありますが、作り手をその結果疲弊させるようでは意味がありません。

本当は作り手が自らするべきことなのです。

現在のネット販売業者も、もっともっとキモノや帯のことをよく勉強して、消費者に正しく自ら解説できるようになってもらいたいものですし、とんでもない値を付けて安くしますなどという品のない商いは、結局この業界の不信を生むだけですし、是非改めてもらいたいと心から思っています。

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