寸法の話

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この間ある女性国会議員が、お母様のキモノをそのまま着て、おはしょりもなく、裄も極端に短く、襦袢の袖が見えていてまさしく格好が悪いのに、それをそのまま自らのツイッターで晒してしまっていました。

この女性はキモノのことをほぼ全くご存知ないのだろうと思いましたが、キモノはある意味、オートクチュールの世界で、普通はその方の寸法に合わせてお仕立てします。

戦前までは、絹ものの上物はほぼすべてお誂えで作るので、最初からその方の寸法で仮絵羽して、柄づけをしたものです。

しかし今は、作り上げたものを買われておられるので、絵羽ものなどはある程度共通した寸法で作りますから、その寸法以外だと、色々問題があります。

身幅は、大体前幅6寸5分(24.7㎝)、後ろ幅8寸(30.4㎝)という作りますので、柄が合うようにその寸法で仕立てると、普通の体型の方なら、問題ないのですが、

大変細い方や体格の良い方は、普通幅のままで仕立てると、ちょっと着るのは困難ですから、その方の寸法で仕立てます。すると、当然ですが柄が合いません。

普通のデパートや呉服屋では当たり前のように、その柄の合っていない状態で納めたりしていますが、私はとてもそれではお気の毒ですので、時間があればその方の寸法で作り直しますし、時間が無い場合は、今まで散々そうした場合に柄合わせすることをしてきましたので、色々なノウハウを持っていますから、可能な限りそのように修正をさせていただいております。

寸法が合わないままお召しになるのは大変みっともなく、特に裄の場合は、長襦袢との兼ね合いもあるので、注意が必要です。

あるお客様が銀座の新興の呉服屋でお買いになったおキモノをお持ちになり、何か着にくいから直してくれということでしたが、お計りすると、本当にいい加減で、もっと驚いたのは、他にもお買いになっていたキモノ寸法が微妙に違うのです。そしてそのキモノごとにやや寸法の違う長襦袢を作っていたのです。

要するにそのキモノにしか合わない長襦袢をその都度つくらせるためにわざと寸法を変えていたとしか考えられません。

あり得ないことをする嘆かわしい店だと思っていましたが案の定倒産してしまいました。
販売員がまるでキモノ寸法の図り方の基本も知らなかったのでしょう。

こういう輩がいること自体がこの業界の不信を生むのです。

売り手は寸法のことは当然のごとく勉強するのは常識です。

またお客様の寸法が普通は幅とかなり違う時にどう対処するかということも学習する必要があります。

ところが問題なのは、そういうことを知るベテランが次々と現場を去っているので、全くどうしていいかわからず、結局全く柄が合わないままお納めしてしまうことが常態化しています。嘆かわしい限りです。

ところで近年リサイクルの店が増えました。

江戸時代には、呉服屋、太物屋、そして古着屋という風に、以前からも同じような店は存在していましたが、古着屋で買った物は当然ですが寸法が違いますので、当時は自分で縫い直したのです。

つい近年まで、和裁のできる人は多く、洗い張りも自分でして仕立て直すなどをして大事に着ていたものです。

しかし今では和裁のできる人も少なく、母親のキモノだと寸法が違うから着られないと言って捨てられたり、こうした店に持ち込まれます。

ところが最近問題なのは、今の人はみんな手が長いし、昔の人と体型が違い、裄が本当に合わないのです。

そのことを売り手が分かっていても知らん顔して売ってしまうと、寸法のことなど何も知らない方はそのままお召しになって、大変みっともないことになってしまいます。

以前にたぶん間違いなくリサイクル店で買ったと思われる男物を着ていられる若い男性がおられたのですが、何と羽織の裄の方が短かったのです。

こうしたこともすべて売る側の知識や見識の問題です。

お金がかかっても直して着られること薦めて欲しいのです。

キモノは美しく着ていただきたいのですが、それはコーディネート、着つけの問題もありますが、寸法が合っているというのが基本です。

販売の仕事に従事して間もない人は、良く知る人が現場にいる間にせいぜい聞いて勉強してください。

作り手も、日本女性の体形が変わってきているので、それに合わせて変えて行かねばなりません。

まだまだ勉強しなければならないことは山ほどありますね。


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