虫干しの大切さ

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早くも10月となり、袷の季節となりましたが、夏の間にお召になったキモノは必ずお手入れをされてからおしまい下さい。

シミを放っておくと抜けなくなってしまいますし、汗で汚れた襟なども同様です。

ところで、先日から連続、黒留袖の変色を何とかしてほしいという依頼が来ていますが、以前にもご説明していますが、京都の上物の黒留袖は、従来から三度黒という特殊な染め方をしてまいりました。

これは黒の染料を三度引くのではなくて、ログウッドという植物の根から抽出した液を引き染して、媒染剤としてヌワールナフトールという液をその上に引き、最後に重クロム酸カリウムの溶液を引くことで酸化させて黒色を発色させるのです。

実際にはその前に地入れがありますので、4回も引かなければなりません。

手間はかかりますが、ゆっくりと酸化していくうちに、むっくりとして厚みのある黒となりますので、高級な黒留袖はすべてこの染め方をしておりました。

江戸時代までは黒色というと檳榔樹を使っていたのですが、安定した色が出なくて、もっとも色の出しにくいものでした。

明治になって黒染めの業者が、スペインの皮を染めるこの手法を知り、工夫と改良を重ねて、三度黒という技法を完成させ、その後この染め方が引き染では主流となりました。

ただ一つ難点があるのは、黒い染料で染めたのではなく酸化といういわば化学反応を応用しているので、保存状態によってその酸化が思いのほか進んでしまうことがあります。

そうなると変色が起き、総じてやや赤っぽい色が出てきます。

勿論絹は経年で劣化しますから、そのことでの変色とも関係がないとも言えませんが、特にその酸化度合いが想定外に進行するものが稀にあるのです。

一つには最後に引いた重クロム酸カリの溶液が必要以上に多すぎたまま、それをきちんと落とさなかったということがありますが、これはすぐに変色しますのですぐにわかります。

そうではなくて、仕立てたまま、長い間一度も着ないで箪笥にしまいっぱなしという時に、この変色が起きていることがあるのです。

その保存状況によるのですが、湿気があったり温度変化を受けやすいと、予想外の変色が起きていることがあります。

そういうことを避けるためには何が一番かというと、やはり虫干しをして陰干しで風を通すということです。

まず何よりも良いのは、着るということです。

着た後に汗などかいたらよく乾燥させきちんとお手入れをしておしまいになれば、こうした予想外の変色はありません。

私の母の黒留袖は何枚もありますが、どれ一枚も変色していません。

よく着ていたのと手入れを欠かさなかかったからだろうと思います。

正しく手入れなどを怠りなくしていれば、酸化は一定のところで止まり黒色が定着します。

現在では加工賃を安くするために、黒の染料を1度だけ引くという染め方が主流になっていますが、これはこれで、経年で必ず退色して、色が白けてきます。

これとても手入れをしていれば、それを遅らせることはできます。

絹は動物性染料ですので、いずれは使用ができなくなるほど劣化していきますが、大事に手入れをされれば、半世紀ほど着用に耐えられます。

そのためにも虫干しをすることと、お召になるということが一番であることをお忘れないでください。

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