伝統産業の機械化

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日本全国には数多くのいわゆる伝統産業、伝統工芸が存在しています。
これはまさしく日本の歴史を物語る貴重な文化でもありますが、ライフスタイルの欧米化で、多くのものが需要されず廃れつつあります。
中には急に海外で注目されて需要が急増しているような南部鉄器のような例もないではないですが、ほとんどは生産も落ちる一方となり、後継者も減っており、多くの技、道具、材料なども枯渇しはじめています。

元来の伝統工芸はすべて手で作って行くものであって、伝統産業として国に認定されているものは全て従来からの作り方をしているものであって、そうでない作り方をする伝産マークのシールがもらえません。

とは言っても人がいなくなり作ることそのものが出来なくなるのではその産業は崩壊し消滅してしまいます。

そこで職種にも寄りますが、機械でできることは機械化して行こうという動きは当然出てくるわけで、産業を守るためには致し方ないのかも知れません。

然し近年の機械は大変優秀で、高度な技の職人と同じようなことができるものも少なく無いわけです。

そうなるとその職人が要らなくなるのかというと、そうでもありません。

機械で出来上がったものの細部に、手の仕事が加味されることで、より味のある本物が生まれるということであって、矢張り手練れの職人の存在は不可欠です。

人がいないから機械を使うと、職人を育てられないけれどだからといって機械だけではだめだというのは、若手職人を育てていく上の矛盾です。

それを解決し、機械と手の力を融合していけば、本来の産業を守っていけるのかもしれませんし、そうあるべきなのではないかと私は考えています。

キモノ業界でも、手描き友禅の糊置きや彩色の部分が人がいなければ、そのところをインクジェットでカバーして、その上に本物の金彩工芸や手刺繍でカバーしていくことで、遜色ないものが生まれる可能性はありますし、消費者にはそのように説明すれば理解されると思います。もしかしたらもう出来ているのかもしれないのですが、インクジェットの製法をいつまでたっても明らかにしない情けない業界ですので、それでは機械を使う工夫が胡散臭く思われてしまいます。

私はいずれそうしたことを考えざるを得ない時代が来るのではないかと思っておりますし、インクジェットとの競合を考えるのではなくて融合を考えていくことで職人育成のスキルも変わっていくのかも知れません。

すべて優秀な手作りでつくり続けていける職種ももちろんあるのですが、そうでないものを生産する上での知恵と工夫は重ねるべきです。
ただ本物だと思えるものづくりにはそれなりの材料が必要なのですが、それ自体の生産が非常に危なくなって来ているという背景があるので、まずは大元を何とかしなければならないということだと思います。

しかし需要がなければ生産はできませんから、今のライフスタイルにいかに伝統工芸を生かしていくかということは重要な課題であり、それには祖の伝統産業などの良さをよく知る人を育成するということもまた同様に重要な課題です。

先日講演したところにいた若い男性は不動産業でありながら床の間を知りませんでした。そう言う物件がなかったからということです。こういうことが当たり前のようになっている日本の中で、伝統的なそうした文化をどう盛り込んでいくかというのは難問とはいえやって行かねばならない大きなテーマです。
日本のアイデンティティを自らが壊していくなど恥ずべきことなのだということを認識させるためにも私も啓蒙活動をしていこうと思うこのごろです。

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