バランス

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私は改革には若さが必要で、これからの人たちに後を任せて、実は65才でこの業界から引退しようと以前から思っていたので、その予定に基づいて徐々に会社を縮小し、現実に辞めようと思えばいつでも辞められるような状況にしてきました。
でも諸般の情勢に鑑み、又お客様のためにもとても辞められそうもなく計画は変更しなければなりませんがね。

このキモノ業界は、バブル経済がはじけてから、10年経つか経たないうちに、信じられないような老舗の問屋や、小売屋がまさしく信じられないようにもろくも倒産していきました。

今から思えば超丼経営の無能経営だったということにつきます。

私は大学は経済学が専攻でしたが、今は知りませんが、当時はいわゆるマクロ経済の授業で、所謂実学とは言えないものです。

経済原論などと言うのも、まあこうなればこうなるはずと言ったようなもので、いわば机上の空論で、今の実社会ではほぼ何の役にも立たないようなことばかり勉強してきました。

当時はまだ完全競争市場下での経済学というのが生きていたので、ある程度理論通りになるようなことはありましたが、現在のような複雑な環境下ではほぼまったく役には立たない学問でした。

私は商売人の息子でしたので、商いは消費者目線、つまりは心遣いが大事だと思っていたこともあって、経済学の教授に、経済とは人の心理で変わるので、行動心理学を合わせて勉強するべきではないでしょうかと質問したら一笑に付されました。

今から思うとその男も何にも知らない世間知らずの机上の空論者です。
大体経済学を教えるものが世間知らずで通るわけもありません。

その点私のゼミの先生は面白い人で、「君たちが今勉強していることは社会に出ても何の役にも立たないよ。ただある程度上のほうになってから少しは勉強していたことが間違いではなかったと思うだろう。それは一言で言えばバランス感覚で、勉強していたから養われるものがある」というようなことをおっしゃっていました。

私はこの言葉が耳に残っていて、正にバランス感覚ということが何より大事だと今でも思っています。

3年になって、父が継いでくれと言ってきたので、当社のような零細企業では経営者は財務の知識も持っていなければならないと思い、経済学部では授業に無い簿記を、当時有名だった村田簿記の夜学で習いに行きました。

経営には実学が必要だと思って学習して、一応資格も取ったのですが、当時簿記の授業と共にそろばんの授業もあって、それはきっと必要無くなると思ってサボっていましたね。

でも昔は売り買いの値を五つ玉の大きな算盤で弾いていましたが、いまの若い人はそんなものがあったことさえ知らないでしょうね。小さなころそれをスケート代わりにして良く叱られたものです。

私は父の会社に入ってから、試算表を自分で組んで、BS,PLも作成していました。

ですから経営とはバランスだというのは若いころからずっと当然だと思っていたので、業界の丼勘定的体質には信じられない思いでした。

丼勘定とは、昔、魚屋さんや八百屋さんが締めていた前掛けの前に大きな袋がついていて、それを丼というのですが、そこに販売代金を投げ入れ、支払いもその丼に手を突っ込んでそこから金を出すのですが、いくらその丼に入っているのも知らないから、払えなければ払わないというような、極めていい加減な金勘定です。

キモノ業界はそう言うことをしてきた歴史が長く、しかも委託取引が主流となって、貸して売れて金が貰えないという商いでも続けて来て、だから仕入れ先にも払わないという輩もいるわけです。

私のモノづくりは、職人さんに仕事をして貰うたびに現金を払って長い時間をかけて作り上げていくので、どうしても先行してお金が出ていきますし、次々作って行くと、帳面上は利益が出ていても実はみんなそれが仕掛在庫に化けていて、お金は手元に無いという状況です。

だから金を借りないとやって行けなかったという実態があります。

それでもバブル期までは何とか回っていましたが、バブル経済弾けてからの得意先の丼勘定経営者のやったことがひどくて、自分はリストラもしないで、我々仕入先への支払いをどんどん減らすのです。

売ってやっているのだから応援するのは当たり前だと、自分の無能を棚に上げて嘯く始末でした。

結局仕入先の信を失い、倒産しましたが、そうしたことで我々は被害を受けて、正に丼勘定の経営をしているものと取引をしてはいけないと、胆に命じたものです。

私は財務がわかったので、経営上も損益分岐点を知る上での費用分析などをして居ましたが、この業界には固定費と変動費の差を知らない人も多く驚きました。

そのことがアンテナショップ開設の大きな動機でした。

私はバランスを考え、身の程を知って、足るを知るということの大切さを肝に銘じてはいても多くの失敗を重ねたものです。

ただ当たり前のことが出来なければ潰れるという思いで、どれほど苦しくとも支払う金を止めたことも減らしたことも父以来一度もありません。その為自らが我慢して本当に大変なときもありました。
でもそのおかげで今があるのだろうと思っています。

まずは御客目線であることは商いの基本ですが、自分を客観的に見つめ、先を見てバランスを崩さない経営をしていけば、そうは簡単に会社は潰れません。

中小零細企業は(大企業でも)トップ次第です。トップの見識、良識が要であることを肝に銘じ日々研鑽に努め、お陰様という気持ちを持ち続けていることです。

驕り高ぶらず、世のため人のためという思いを持ち続けていればきっと神はご褒美をくれるものだと信じて頑張るのです。

ただ絶体に必要なことは、夢、希望、目標を設定することで、それ無くしては戦略も立てられませんし知恵も出ません。そして反省する気持ちを忘れないことですね。

私のブログを業界の方も読まれているようですが、バランス感覚というのは大切です。胆に銘じておいてください。

キモノ業界の未来は確かにバラ色とは言えませんが、着たいという人は確実に増えているのですから、真面目にその人たちのキモノライフのお手伝いのできる所には光がさすと思います。夢は捨てないことです。

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