分業制が危ない

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いつもあまり良い話がないので恐縮なのですが、ものづくりの現場は相当に厳しい経営状況ですから、思い入れがないところは次々と業界から去って行きます。

過日もある北陸の機屋さんが、ここは長襦袢の生地を織っていて最盛期60台近くフル稼働していたのが、現実8台だそうで、ずっと赤字が続いているということから、現在40歳くらいの代表が廃業をすると決めたとのことです。

じつは他の業種でも同じことで、若い人はこれから食べて行くのに今の仕事ではだめだと思って次々と去って行き、結局高齢者で後継者の無いところが辞めないで頑張っているというような事態です。

京友禅や西陣織は高度に分業化されているがために、後継者の無い職種は極めて深刻な事態です。ある仕事に従事する職人さんがゼロになったら、仕事がつながらなくなり、特に手描き友禅などは崩壊してしまいます。

これは西陣でも同じです。分業制に従事する職人さんは、あるところの専属というところもありますが、基本的には何軒かの仕事を受けているのです。

つまりこの分業制は、みんなで支えてきたわけで、一軒だけでそのものづくりのシステムをひっ構えることは100%不可能です。

西陣でとんでもなく歴史があると吹きまくっている織屋があるそうですが、分業制のことを考えればそれがおかしいというのは誰でもわかります。

他に誰もまだ織っていない時に、自分一軒だけで物づくりのシステムを支えて来たというのは理解に苦しみますな。

みんなで維持してきたシステムが、徐々に一抜け、二抜けと支えるべきところが減り始め、かつてのたった数パーセントの生産では、後継者も育たず、高齢者に頼っているだけという状況です。

あと何年で崩壊するのか全く分かりませんが、真面目な業者はかなりの危機感を持って仕事に当たっています。

しかし流通側にとんでもない輩が山ほど存在していて、この業界の評判をとんでもなく貶めているのも事実です。

都知事のキモノが1千万だとかあり得ないようなことを吹聴するような業者がいまだに数多く存在している現実に絶望的な思いをいたします。

まあ作家ものと称するものがとんでもないどうしようもない値で売られていることは確かにありますが、真面目に作られた裾模様だけのキモノは、よほどのものでなければ、まともな流通なら300万円もしません。

高級呉服を見たこともない人にとんでもない誤解を与えるようなことを何故いうのかということも含め、希望小売価格が明示出来ないままに推移しているこの業界に、不良な流通業者が介在する余地があると言うことなのです。

産地が勇気を持って小売価格を決めていくことが信用の回復につながると思います。

安物をとんでもない値で売りつけるような輩を排除するのは作り手なのだという自覚をもって、積極的に流通に関与していくことしかこれから食べていけないのです。

質の高いものをリーズナブルに届ける道を探ることしか、本物を守ることは出来ません。

ろくでもない安物や浴衣ばかりしか作れないような業者しか残れないようなら、キモノを買う人は今以上に激減します。

作り手を守れない流通業者というのが本当に問題なのです。

心ある小売店、問屋、作り手が同じベクトルで手を取り合って、キモノ文化の維持継承に取り組んで欲しいなどと、私はずっと言い続けておりますがね。


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