紬が売れない?

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私は若い頃、業界の当時若手のリーダー的存在だったある青年会で活動しておりましたが、その当時の後輩などが、結構みんないい年となって、跡継ぎとして活躍しております。(倒産したり廃業したところの方が多いですが)

当時構築した人的なネットワークが私の財産です。彼らの人間性も知っているので、本当にまじめな人たちだけと今もおつき合いをしております。

そんな中に紬問屋の社長もいますが、過日四方山話をしていたら、最近地方の呉服屋が

急に紬が売れない、売れない、これからはまたフォーマルだなどと言っているそうで、奇異な思いをしました。

ここ10年ほどフォーマルが売れない売れないと言って、やれ普段着だ、洒落着だと言って、今まで扱っていなかった紬などを主力に展開するところが増えたのは確かです。

しかし地方都市にはなかなか普段着を売る素地がありません。
お茶のお稽古など伝統的な日本文化に携わる人たちの需要か、婚礼が主ですので、
紬を一生懸命売ろうとする呉服屋の不明に呆れていました。

フォーマルを扱わなくなって、在庫もほとんどありませんから、問屋に電話して借りるだけのことで、そんなことで良いものが集まるわけもなく、結局店外催事で私など見ると目が潰れそうな、センスのないものを作家ものだと称して飛んでもない値で売りつけていました。

しかし地方にも目のある方もおられますし、そういう方がネットなどで私を探され、銀座の私の店に高級フォーマルをお買い求めにおいでになります。
今や銀座といえどもそういうものを置いているのは当店ただ一軒ですし、おいでになった方は私のセンスをお褒め頂き、まず間違いなくお買いになります。

地方の方は紬などをあまりお持ちでなかったということはあるでしょうから、ここのところ売れていたのかはどうか知りませんが、結局着て行く場所がないので、買わなくなったとか、小売屋も調子に乗って、たかだか普段着なのに手描き友禅よりも高い値で売りつけて来たことの報いもあって、地方で紬が売れなくなったということでしょうか。

当店は泰三のアンテナショップですから、私が作っていないものはないわけです。
しかしいわゆる一般的な呉服屋を標榜する限りは、晴れの席、褻の席問わずキモノを着るシーンに対応できなければなりません。

ですからフォーマル、カジュアル問わず、自らの好みを発信するのが仕事ですが、偏った商いをするから行き詰まるのが分からないのでしょうかね。

確かに高級フォーマルの製造は極端に細り、式服を貸し衣装で済ませる人も増えているので、益々黒留袖などの高級品など、貴重なものとなってきました。

銀座の私の店にあるものも今やお宝級となっていますが、私もそう長くは作れないという物理的な事情などもあるので、今あるものは早い者勝ちでいずれ買おうと思っておられるなら売約にされないと無くなっていくというのが実情です。

いまさらフォーマルを売ると言っても在庫もないのに電話一本で問屋に注文出しておいしい商いをしようなどということでは、売れるわけもありません。

自分がキモノが好きなら、自分の好きなものを仕入れ、それをお客様に提案するという基本が全く今は抜けていますし、これからいったい何を売って行ったらいいのかなどということ自体が本当はおかしな言い方なのですがね。

その紬問屋の社長が嘆くには、銀座のある店が紬を売ると言っても作家もので高いものでなければ扱わないといわれ、その会社がより多くの人にお洒落な紬を着てほしいという思いで、それほど高くならないオリジナルのお召しを作らせているのに、それを扱ってもらえないとぼやいていました。

私はモノづくりをまじめにする人、それをまっとうな値でまじめに販売する人は応援しますが、名前があっても粗悪なものを平気で作るような見識のない作り手はいくら人間国宝であろうがなかろうが忌避します。

売れれば、もうかれば何でもありというのは真面目な老舗のメーカーなどが一番嫌がります。
でも中には自ら安物屋へ急降下して、ろくでもない流通でとんでもない値で売っているところもあります。
まあ生き様というか、見識、理念の問題でしょう。

紬が売れないということは無いけれど、そればかり売っていたら、それも既存のお客ばかりに提供していたら詰まるのは当たり前です。

新しいお客を開拓する努力と、作家名などに頼らない。自らの目利きで商うという姿勢があれば、ずっと販売できると思いますがね。

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