染の北川倒産

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京染呉服製造卸業として、当社の同業でもあった北川が破産申請をしました。

私の若い頃は業界でもダントツの存在で、実際良い物を作っていましたが、今の経営者に交代してから、坂道を転がり落ちるように業績が悪化していきました。

まあ無能の極地のような男でしたので、いずれはこうしたことが起きるだろうとは予想していましたが、何よりだめだったのは、以前はオリジナルのものを悉皆屋に作らせていたのに、いつの頃からか、名のある悉皆屋のセンスを利用し始め、いったい何がオリジナルなのか分からないようなモノ作りをしていたことだろうと思います。

高級品というのはやたら柄の重いものだというセンスの悪さで、実に田舎臭い作品を作っていたので呆れておりました。

商いも無節操にどこにでも売りますし、それも価格もむちゃくちゃで、結局何の戦略もなく、理念、信念も皆無でしたね。

近年の市況悪に、悉皆屋への支払いを悪くするという一番してはいけない無能経営で、
その癖いつも大言壮語するありさまで、まあ当然の帰結ではあります。

仕入れ先に金をろくに払わない、払えない会社で生き残ったところは皆無です。

中には払えるのに払わないというずるいものもいますがキモノ業界にはこうした商いの常道さえ守れない、商いをする資格がない輩がまだ山ほどいるのは本当に情けなく嘆かわし限りです。
そういうところにものを納めるということ自体もナンセンスですが、売り先がどんどん細くなっていったので、致し方なく付き合っていたということが結局は痛い目に遭うことになるのです。

今回真面目な悉皆屋さんが数多く被害に遭います。大半は金融債務ですが、一般債務でも1億円はあるようです。
この会社は一応高級友禅を主体としていたので、今後一段とそういうモノづくりは細くなり、市場から良い物が次々と無くなっていくと予想されます。

悉皆屋の中には廃業を考えるものもいるでしょうし、そうなるとまた職人さんに仕事が行かなくなりますし、職人さんも辞めてしまいます。

手描き友禅業界の落ち込みは甚だしく、この先のものづくりに益々暗雲が立ち込め、ものづくりは暗中模索状態です。

もう一つは流通への悪影響が考えられます。

ここのキモノは雑誌やネット販売でも結構名が出ていますので、この在庫を安く買い取って市場に流す輩がいると予想され、それが市場を乱します。

またここを利用していた問屋は益々もの集めに苦労し、特に高級品はほぼ皆無となっていくでしょう。

問屋がかつてのようにリスクを張ってものづくりをすればいいですが、今やブローカー化している問屋にそんな能力さえありません。

泰三のキモノなど益々お宝化して行くような気配で、業者の若い連中でもいいものなど見たことないので、私の店に来て、色々見せてあげると驚嘆しています。

本物、上物を見たこともない連中が作り、商い、見たこともない消費者に売っていくので、我々から見ると本当に陳腐なものが大きな顔をしているのは暗澹たる思いです。

小売り屋、問屋があまりにもリスクを張らず、メーカーにすべてリスクをかぶせてきたことが、ものづくりの減退の大きな背景ですが、今さら元には戻りませんし、次々と市場からモノづくりをする人が去っていくと考えられます。

高級フォーマルはこの国にとっても大切なキモノですが、このままではほとんど作れなくなっていくことでしょう。そしてみんな貸衣裳になっていくのかもしれません。

私の時代が終わったのかなと思うことが次々周りで起こり、残念な思いとは言え、低級化への流れは変わらないでしょうし、仕方がありません。

需要無くしては供給はありませんのでね。真面目な商いをしていれば潰れることは無かったと思いますが、何とももったいない会社がなくなってしまいました。

昔から知っていた会社や人が次々といなくなっていきます。寂しい思いをするこの頃です。


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本当にそうですね

悲しいニュースですね。私は着物が大好き

北川さんといえば高名なところで、閉められたと今知ってショックです。素晴らしい品質とは知りながら、柄の趣味が違い、私の代になってからはご縁がありませんでした。

地元京都の着物の田舎臭さ化・文化の低級化は嘆かわしいばかりです。
当方はお金に糸目なく呉服を買うほうではありませんが、だからこそ、買うときは安さよりも長く着られるしっかりした良いものをと思っております。また、ここぞという晴れの日や人生の節目には、一生心に残るような高級呉服が必要だとも。

でも、いざ買おうと決心してみても、長い歴史と最高品質を誇るメーカーのお品は、一体どこへ着ていくのかと思うような、ケバケバしい柄ばかり。和室に映えない品のない色づかい、洋花だったり、勘違いしたモダンを取り入れたバランスの悪いお着物。
かと思えばやたらと明るいだけのパステル調。ピンクに水色、可愛いお色。それもいいけれど、もっと奥ゆかしくて澄んだお色味があるはず。品の良いお道具や古いお座敷にあっては浮いてしまいます。
季節や風景を取り入れるのもいいけれど、あまりにテーマを打ち出しすぎた柄は田舎の人の買う絵葉書じゃあるまいし…。帯もしかり。最近のものは趣味が悪すぎです。
しっとりした上質な和の空間に足を踏み入れたことの無い人たちが作っているに違いありません。

少しお手頃で上品な柄ゆきの着物があったとして。インターネットではわからないかもしれませんが、やはり上等なお着物の集まりに行けば、ペラペラ感は否めません。染の質からして、生地からして、もう住む世界が違います。
良質なメーカーさんであっても、近年急に生地の質が薄くふにゃっと腰の無いものになっていたり、帯の織りが平板になっていたり。それを呉服屋さんに言っても「そんなことありません、同じメーカーですよ」って。貴方、お袖を通されたことがないのね。
結局、趣味がよく信用できると思う呉服店は、京都といえど数軒しかありません。

こちらに住んでいると、あちこちの呉服問屋さんの社内セールなどにも御招待状をいただいたりして覗くことがありますが、社員さんたちの知識の無さには、素人の私でも唖然です。

一般的な街の呉服屋さんでは、儀式、正装の古式の正統様式を知らなかったり。知識面でまだしも頼りになるのは古くからの洗い屋さん、昭和中期から内職で和裁を続けているおばさんなど呉服業界ではなんの発言力も無い人たちばかりです。ですがその人たちも、もうかなりのお年の方々ばかり。当然、息子さんたちはもう別の仕事をなさっており、あとはのれんを下ろすのを待つばかりという状況。

日本で名だたる一流呉服問屋の奥様方が、知人の披露宴にワンピース+エルメスバッグで出席。「着物は着たら手入れが大変ですからね」って… それでお客に着ろというのは無理があります。

またちょっと豪華なものは若い人向けが多いですね。振袖は今やレンタルが多いそうですし、若い主婦の方はお子様もお小さくて晴れ着はともかく、普段の出掛けにはなかなかお着物を着られる機会が少ないことでしょう。お嫁入りには仕立てたけれど、結局着る機会があまりなかったと言われる華やかカラーのお着物が国内のタンスにどれほど眠っていることでしょう。一番着る機会が多くなってくる子育て終了世代からのお着物に素敵な色柄が少ないです。
古着が多く出回っていますが、お若い方ならともかく、中年が着古しの着物なんて難しいと思います。まわりには、せっかくご予算も欲しいというお気持ちもおありになるのに、やっぱり着物はよそうか、という方も多いのが残念です。

京都はすでに一地方都市に成り下がってしまったのでしょうか。東京で買えば良いのでしょうが、やはり買いやすいのは生活圏です。京都の染め、織り、これ以上悪くならないでと祈っております。思わず愚痴、失礼致しました。

おおむねすべてその通りでして、
おっしゃるように買いたいと思っている人たちに適品が見つけられません。
安いものしか売れないと思っているような輩がネットで大口叩くので全体が影響されているのかもしれません。上質で上品なモノづくりを目指していても間に入る問屋や小売店がモノが分かっていないから、やたら柄の多いケバケバしたものが増えるのです。
そういう声を無視して作っても今度はどうやって売るかということになるわけで、私が銀座に直接店を持ったのも、消費者嘆きの聞こえる私が直接前に出た方が正義だと思ったからです。ただ、今の作り手は茶道の稽古一つしていないような人も多いので、果たして消費者の真の声が聞こえるかどうか疑問です。これからもキモノづくりは業者の切磋琢磨にかかっていますが、正直言って悲観的です。こうした厳しい声で目覚めるものがいれば幸いなのですが。

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