仕事の断捨離

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2日に火事があって、次の日から瓦礫処理やいわゆる断捨離行動の毎日です。

現在京都本社として使用している数寄屋の家に仮住まいをするためには、この家にある物をまずは断捨離しなければなりませんので、それがまず大変です。

燃えた家からのものを運び込むためにはそれ相応のスペースが要りますから、こうしたことをするのは当然とはいえ、酷暑の中熱中症に気をつけながらも、毎日作業をしております。

家は新しくなりますが、仕事上の種々の断捨離はなかなかに難しく気を遣います。

手描き友禅の高級な絵羽物(振袖、黒留袖、色留袖、訪問着)の生産を中心に親子2代で続けてきて、過去の作品の写真などを見るにつけ、本当に美しく華麗なキモノを作ってきたものだと懐かしく思い出しております。

キモノという世界最高峰の衣装文化は、この20年で急激に崩壊への道を早めていますが、伝統文化への造詣がゼロにも近いような政治家や官僚、目先の金しか頭にない財界人ではまあ致し方ないでしょうし2度とかつてのような物作りが復活することもないでしょう。

先月も同業で、高級な絵羽物を主に物作りをしていた人が、東京日本橋のとんでもないカスのような問屋に大きな被害を受けて、廃業されたのですが、その後まもなく亡くなり驚きました。

ずっと癌を煩っておられたようで、まさに仕事に命を掛けてこられたということでしょう。
私はまだ死ぬわけにも参りませんが、これからの仕事のことを考えると、良い大学を出ても日本文化などからきし知らず、床の間に腰掛けるような輩が激増していくような日本ですので、高級フォーマルの絵羽物が今後は貸し衣装でも十分だという風潮にますますなっていくだろうと思われます。

ですから、当社が培ってきたものつくりの文化や、過去からの数多くの資料も今後無用となるのかと思うといたたまれません。

現実に年々、そういう言う物作りは一段と減少していますし、職人さんの仕事も激減状態です。

そういう環境に鑑みて、私もそうした絵羽物の生産は、お誂え以外の見込み生産はこの年内で止めることにいたしました。

銀座に店に千客万来と言うことなら、まだしばらく頑張れるかも知れませんが、時間と金の掛かる高級品の物作りは、現状では厳しいのです。

大変残念で内心忸怩たる物もありますが、職人さんたちの高齢化を考えると、いずれは止まってしまいます。

そうした物作りが仮にとんでもなく細くなり、いずれ作れないという事態が来たとしても、キモノを着たいと思う人は確実に増えていますから、キモノ文化という物が消滅することはありません。

古着やレンタルばかりだけでなく、自分のキモノを買いたいと思っている人も少なくないのですが、相変わらず消費者目線ゼロで、相変わらずの催事販売でとんでもないようなものをとんでもない値で売りつける商いに何の反省もなく、消費者の不安や不信はいつまでも払拭されません。

正しい知識とキモノという文化への造詣を持ち合わせている流通業者が極端に減っている現在では、私は作り手と消費者の仲立ちとしてお手伝いできることは少なくないと思って居ます。

作り手から消費者の手に渡るまでに、いわば川越の渡し賃があまりにも高いという今の業界環境を変えるには、色々な手段もありますし、私もそれに取り組んで来たわけですが、環境が悪化する一方の中で、消費者への直接販売をできるところもそうは多くありません。

ですから私のようにキモノが好きでたくさんきものを買ってきて、キモノを良く着る身として、消費者へ色々アドバイスできることはたくさんあります。

フェースブックの私のキモノ姿を真似てキモノを作ったらとても褒められたと言うような声も聞きますが、業界人でそうした手本になる着姿を提案できる人もほとんどいないと言うことですから、たとえ物作りができなくなっても、私ができることはたくさんありそうです。

リーズナブルに良品を消費者に届けるだけでなく、コーディネーターやアドバイザーとして私が要求される限りは、キモノ文化の将来のために頑張りたいと思うこの頃です。


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コメント(2) | コメントする

高橋様
この度の御災難御見舞い申し上げます。
ただでさえ、呉服業界の大変な時代に、なんとも申し上げようもなく……
御家の材も室礼も保管されておられた着物類もさぞ趣味の良い貴重なものであったろうにと推察いたしますと、なお無残に思われます。
お力落としのことと存じますが、少しでも良い運が開けますようお祈り申し上げております。

有難うございます。焼失した物、水濡れしたものなど確かに残念なものも多いですが、幸いにも天井が耐火ボードでしたので、意外と残っているものも多く助かっています。
済んでしまったことはしまったこととして、次のことを考えないと行けませんし、そのつもりです。今回のことも災い転じて福となると言う思いでこれからも頑張ります。

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