色留袖の話

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先日黒留袖の話をFBで投稿したら色々とコメントを頂きました。

黒留袖のことはある程度ご存じの方も多いのですが、色留袖のことは曖昧にしか知らない人が多いように思います。

以前あるサイトに、色留袖は黒留よりも格が高い、その証拠に宮中では黒留を着ないと書き込んであって、文面から見てキモノ業界人だったように思いましたが、ひっくり返るような思いをしました。知ったかぶりにも程があります。

宮中で黒留袖を着用しないのは、宮中では古来より黒という色は喪の色という扱いなのです。

日本の喪に服するときの衣装の色はずっと白でした。中国でもそうだったことが伝わったと思われます。明治になって何でも欧米のまねをしようという教養無き薩長の輩が、欧米の公式の色、黒を取り入れたので、変ってしまいました。

しかし今でも地方によっては白の喪服を着用するところがあります。

韓国のチョゴリは喪の時は白のようですね。

大和朝廷などは白だったのですが、藤原京の時に大宝律令が制定され、その補完で養老律令ができるのですが、その中に衣服に関する取り決めがあり、喪服のことも記してあり,
二親等以上の葬儀には錫紵(しゃくじょ)をという衣装を天皇が着ることとなっています。

これは中国の皇帝が、錫衰(しゃくさい)というものを着ていたことに由来するのです。

実は錫というのは本来中国では白い麻布のことなのですが、文献のみで学んだ当時の役人が錫を「すず」のことだと勘違いして、天皇が喪の時に着る衣装の色は鈍色(にびいろ)或いは墨色になってしまい、公家もそれに倣ったようです。
後に間違いであったことが判明したでしょうが、昔も今も役人というのは謝らない改めないということでしょうか、朝廷ではそれ以降黒は喪の色ですので、一般人が黒の色の衣装で参内することは禁じられていました。
漆黒の黒を当時の草木染で表現するのはなかなか難しく、黒に近づくほどに高貴な色とされたようです。

ただ二親等以外の時は朝廷でもやはり白のものを使っていたようで、明治までは喪の色は白が普通でした。

余談ですが、今上天皇の御長女の婚儀の際、皇后陛下は黒留袖をお召しになりたくて、泰三のキモノがその候補に挙がっていたのですが、宮内庁が強硬に反対したようで結局色物になさいました。

そんなわけで宮中では黒は喪の色ということで、叙勲で参内するときにはキモノなら本来なら既婚者なら第1礼装の黒留袖が正式ですが、着てはいけないということで、第2礼装として色留袖を着て行くようになったのです。

実は色留袖つまり色裾模様というキモノは歴史が浅く、昭和40年代の初め頃から普及し始めたと言われています。

昭和39年の秋から、叙勲制度が復活したことと無縁ではありません。

私も若い頃は圧倒的に黒留袖の需要が多く、色留袖の生産はまだまだ少なかったのですが、叙勲、褒章制度が一般化して、対象者の数がかなり増えたころから、色留袖の需要が高まり、春秋の叙勲の前あたりに、急に注文がたくさん舞い込みました。

昭和50年代の後半あたりから、泰三の豪華な色留をお召しになって参内する方が相当おられました。ある年にはある小売店の10人以上のお客様が泰三に色留を着て行かれたということで、同じものがなかったかと気にされていましたが、私はそういうことがあるのを知っているので同じものは2枚と作らないという生産をしていましたので、安心してお取引して頂ておりました。

ですから高級な色留袖はまさにこの叙勲制度のおかげで生まれ、作り続けてこられたということです。

そして普通に婚礼でも、招待される側の着て行くキモノとして最高のものとして色留袖が定着したのです。

正式には5つ紋ですが、5つ付けると着にくいということで現在ではほとんどが3つ紋です。中には1つでも良いと言われる方もおられます。

しかし近年、高級な色留袖の生産が激減しています。

これは何と叙勲で参内するのに貸し衣装で平気で行く人が増えてしまったからです。
従来なら一張羅として必ず買い求めになっとられたものが、一生に一度だからもったいないと言って借りられるのです。
それなりに地位も名誉もお金もある方の奥様がです。

今では借りるのが当たり前だと思っている人の方が多いようで、私は嘆息するばかりです。

一生に一度しかないこととはいえ、名誉なことですし、家の歴史を語る証拠としても是非お買い求めいただきたいと今も思っています。

貸し衣装で参内しても記念写真が残るだけです。生来孫にこのキモノはどうしたのかと聞かれ借りたというのは誠に情けなく、あればその着物をまた娘や孫が着継いでくれるでしょうし、大切な習慣が、文化が低質化している代表のような話です。

多分これからもそうなっていくでしょうから、生産はほとんどなく探されてもお気に召したものはほとんどないと思われます。

お母さまがいいものをお持ちでしたら、それをお召しになって行かれるということも増えていくでしょうし、新規生産は誂える以外は上物は無くなるでしょう。

泰三の手持ちのものもあとわずかとなってきましたが貴重品であることは確かだろうと思います。一度ご覧においでください。

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