またまた紋について

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火事の後の処理で毎日力仕事においまくられていると、あっという間に1日が終わってしまいます。前回投稿してからもう1週間経ったのかという感じです。

今月は日本橋でまたカジュアルなキモノのフェスティバルのようなものがあるようですが、普段着はいわば何でもありで、柄衿しようが、柄足袋履こうが、人様から目を潜められるようなとんでもない格好をしようが、本人はそれでお洒落だと大まじめに思っているかぎり、誰も何も言うものではありません。

ただ一つだけ、そんな姿で人の家に上がるなと言うことだけはわきまえておいて欲しいと言うことです。

私が次の世代に是非伝えていかねばならないと思うのは、祝いの席などでの着姿、常識です。
それは日本の伝統文化で有り、それが崩れると、本当にもう何が何だか分からないと言うことになって、文化的にも水準は落ちる一方で、紋も付いていないインクジェットの安物の奇妙奇天烈な姿で婚礼に行くようなことになると言うことも考えられます。

ですから人生残すところ20年あるかないかというところまで来た者としては遺言として晴れの席に着るキモノの話だけはしておきたいとつくづく思うのです。

さて前回色留袖の事を書きましたが、色留は招待された側として一番格の高いキモノという位置づけです。
しかし近しい親戚などでは黒留を着るのが常識です。どの辺までかと言われると本来は親族紹介をされる、つまり姉妹、叔母などは既婚なら黒留ですが、問題は未婚の時で、若いうちなら振袖でも良いですが、ちょっと年齢的に気恥ずかしいという場合です。

その場合に色留を着れば良いということを言う呉服屋がいるそうですが、袖を詰めるというのはあくまで既婚であると言うことですので、全く分かっていません。本当にその無知でそう言うことを平気で書く無恥に怒りさえ覚えます。

そういうときはフォーマル系の付下げか訪問着をお召しになると良いと思いますね。

前置きが長くなりましたが、晴れの席にお召しになるキモノには、これはまさしく伝統文化ですが、紋のあるキモノが相応しいのです。

威を正し、紋を付けたキモノを着ていくことが主催者への気遣いとなります。

いわば常識でもありますが、最近紋の付いていない色無地という奇妙なキモノを着て行く人がいたり、そうした晴れの席でのキモノのプロトコールを何も知らない人も増えています。
一つには親が知らないと言うことがあるでしょうし、デパートや呉服屋も無知と言うことも情けないことに関係しています。

紋には数で言うと、一つ、三つ、五つがあります。数が増えるほど正式度が増します。

加工方法で言うと、染め抜き紋、刺繍紋、そのほか貼り付け紋などもあります。

また紋の格で言うと、日向(ひなた)、中陰、陰となり、紋に輪を付けるかどうかと言う選択もあります。それにも太輪、糸輪、雪輪などがあります。

かつては定紋(じょうもん)と言って、お誂えの時にその紋の形を糊で置いておいて、染めていきます。
戦前などはほとんどがお誂えだったので、紋の入るキモノはそのように作られましたが、世の中の景気が良くなって、絵羽モノ(留袖、訪問着、振袖)も出来上がったモノが購買できるようになり、紋は仕立ての時に入れることとなり、キモノの格や着ていく場所などを考えて、染め抜きや刺繍など加工方法や、どのような格で、いくつ入れるとか、販売した者が、そのキモノの格や、お客様の用途などをお聞きして、的確なアドバイスを差し上げることが必要です。

ところがこの紋の知識を正しく有している人が非常に少ないというのが現実で、特に家紋と女紋の違いなどを分かりやすく説明できる人はもっと少ないでしょう。

日本中に紋の数が2万から3万もあると言われていますが、我々業者が使う紋帳では大体4000程の紋が掲載されています。
ほぼそのなかで足りる家が多いのですが、中には歴史のあるお家で特殊な紋もありますし、良く確認してからでないと間違えては大事です。

一般的には家紋を付けるのですが、愛知県位を境に、西の方では女紋と言って、女性だけの家紋ではない紋を付けるのが普通です。

家紋はあくまで家を代表する男が付けるもので、女性は母系の紋を継承していくというのが習わしです。

嫁ぐときには実家の母が付けていた女紋を持って生き、娘が生まれたらその紋を付けさせるのです。

娘が何人かいて、みんな嫁ぐときにその紋を持って行くわけですから、実家で法事などがあって喪服を着ると女性の紋がそろっていると言うことになります。
嫁ぎ先の紋を付けると、何かの事情で離縁となったときに紋の入れ替えに困りますが、女紋で嫁ぐとそういう心配はありません。

東日本は女紋という風習がありませんし、総じて武家文化の影響が強く、武家の紋を拝領したり、真似をしたりしているので、女性でも相当に勇ましい強い紋を付けている人が多く、京都人の私には相当違和感があります。

それで東京に店を出してから、女紋のことをお客様に説明して、優しい女性らしい紋に替えることを提案すると、9割方そうされます。

お嬢さんと2人で決められる方も多く、その紋を持ってお嫁に行くことの意味を理解され、そのお家の新たな女紋をお作りになるのです。

もちろん家紋をそのまま付けるという方もおられますし、何も強制する物ではありませんが、総じて喜ばれます。

また丸の付いた紋の場合、女性なら細輪や、雪輪などに替えられた方が良いとアドバイスしております。

今の時代は東と西の移動や、交流も以前より遙かに活発ですし、こうした西の文化を東の方の文化を、販売するものも知っていなければ恥をかきます。

正式な場所でお召しになるキモノに付ける紋というのは大変重要なファクターですし、これからも勉強をしておいていただきたいと思います。

どの家にも紋章があるというのは世界で日本だけであり、重要な伝統文化ですし、次世代にはその紋名や由来なども伝えていかねばならないと思っています。

特に呉服の販売に携わるものはそうした知識をお客様に伝えていってほしいものです。

晴れの席でお召しになるキモノに関する種々の知識は絶対必要です。
もちろんカジュアルなものへのアドバイスも大事ですが、まずは自ら実践することが一番だろうと思います。

お客を欺くことなく信を得るには自分にお金を掛けて知識と経験をうることです。

いわば当たり前のことですし、キモノを生業として行く人達は心していただきたいと思います。

おわかりにならないことがあればこれからも何でもお尋ねください。

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