糸価の上昇

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今年も早11月、あと2ヶ月足らずで年が明け、私も古希となります。

若い頃70才の人など本当に老人のように思っていましたが、私もその年となると思うと、今更ながらに過ぎた年月の早さを思わざるを得ません。

何も分からずこの仕事に従事して45年あまり、良い物を作れば次々と売れていた時代もありましたが、この20年はどんどん需要が下がり、潤沢に作ることが出来なくなり、自ら流通改革をすることで生き延びてきましたが、この国の世の中の伝統文化への無関心は半端ではない状況となり、キモノも毎日毎日とんでもない量が捨てられています。
大半がリサイクル不可能なものですが、相続などで遺族がキモノを着ないと言うことがほとんどの原因でしょうし、まことに残念な話です。

そんな背景の中では、まともなものの生産数量が落ちる一方なのですが、そこに来て、ここのところ中国からの輸入生糸の値が急激に上昇し、この10年で最高値となっています。
同時期の対前年で60%くらい高く、その上まだこれからも下がる気配がなくまだ20%くらい上昇するだろうと言われてます。

理由はいくつもありますが、まずは中国の天候不順による養蚕の不作です。かなりの減産になっているとのことです。
それ以外に、世界的に絹の需要が増えていて、特に中国国内でも絹製品に人気があるそうです。
かつては一番の輸出先は日本のそれもキモノ需要でしたが、今ではどんどん順位が下がっていて、良い糸はみんな欧州に輸出されるようです。

今後も日本のキモノの生産需要が増えないでしょうし、日本国内の生産者は大変です。

日本国内で使われる生糸の90%以上は輸入に頼っていて、その最大の輸入先は中国ですが、それ以外にブラジルやインド、タイ、ベトナムなどです。

その輸入生糸の基準値が中国ですので、当然他国からの輸入糸も上がっています。
高級品はほとんどがブラジルの糸を使っていて、中国よりも25%くらい高いのですが、ここも大変高くなっています。

生産品の糸価格が占める割合の高いものは、原価が急に上昇するわけですが、それをそのまま製品価格として転嫁できない状況ですので、これから相当に苦しいだろうと思われます。

丹後や長浜の白生地産地や、西陣の帯もそうですし、織物業者は総じてこの先厳しい環境にさらされそうです。

すでにレンタル用の振袖などはポリエステルが主流となってきましたし、それに付ける帯も同様です。

キモノや帯は絹が当たり前という時代は変って行かざるを得ません。

糸商も、高い中国から、ベトナムなどの東南アジアでの生産を増やそうとするでしょうが、一つ言えることは天候などの問題もありますが、確実に品質は下がるのではないかと危惧されます。

高級品の生産は色々と厳しい環境下にあるところに来て、質の高い原料や、材料の枯渇が現実のものとなりつつあるようです。

この状況を解決出来る策は、はっきり言ってありません。

私が近い将来に真の高級品の生産が出来なくなると言うことが思うより早く現実味を帯びてきたような気がします。

今のうちに買い求めておいた方が良いというのは本当です。

これからこの業界でものづくりをしていく人達にとってはこうした材料難、道具の枯渇など厳しい状況が待ち受けていると思いますが、必ず道はあります。

大切な事は、物作りの精神をおろそかにすることなく、今までとは発想を変えていくことだろうと思います。
その時代に適合していけるのが若さの特権ですし、多くの人の知恵を結集できれば新たな道が開けることでしょう。チャレンジ精神を失わず、前向きに頑張って頂きたいものだと念じております。

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