デパート呉服

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昨日も新しいお客様がおいでになりましたが、夕方電話があって飛び込まれて来た方の話はあまりのことに私自身呆れるのを通り越して怒りに打ち震える思いでした。
その方はお姉様から留袖用の帯をお借りになってお締めになった後、しわが気になって、U市の一番のデパートの呉服売り場にある悉皆部にお持ちになったそうです。
デパートに中にあるこうした悉皆部は、デパート直営ではなくみんなテナントで業者が入っているのですが、総じて一流の技を持ったところはほとんどなく高額のキモノや帯は怖くてこんなところには出せません。
しかし消費者はほとんどそんなことはご存知ありませんし、その方も帯を綺麗に整理して欲しいという気軽な気持ちで頼まれたのですが、なんとその業者はその帯を生き洗いと称してドライクリーニングをしてしまったというのです。
帯の生き洗いなど聞いたこともありませんし、大体生き洗いというのは水を使うのが基本です。
その業者は帯の扱いを知らなかったようですが、この場合単にコテを当てるだけで良かったのです。
お持ちになったスマホの写真で、その帯が梅垣さんの引き箔の高級なモノだったことが分かりましたが、梅垣さんの帯は締めた後ぶら下げてけば自然にしわが戻りますし、気になるなら布をあてて軽くアイロンを掛けられれば良いのです。
その方はその業者がこういう加工をしますという仕様書を渡されても何のことか分からず信用していて取りに行ったら、帯の風合いも色も変ってしまっていたというのです。そりゃそうだろうと思います。キモノでもドライクリーニング、つまり溶剤で洗濯なんかしたら絹の持つ光沢や手触りが大きく損なわれます。
その方も大変驚かれて相当に怒られクレームを付けられたようですが、そのフロアの責任者も含めそれ以前のモノを見ていないものは、その業者のやったことに落ち度が無かったと言い逃れするばかりなのだそうです。
消費者センターに相談したら仕様書を渡されているので仕方が無いと言われたとか(多分その担当者はキモノや帯などの扱いそのものを知らなかったのでしょう)で、埒があかず、お姉様に弁償しなければならないと思い、同じ帯がないかさんざん探されたようですが、その帯自体は20年前のものですし、第一どこの織屋の物かさえ分かりませんし、困り果て窮されて、普段から私のブログを読んでおられて、私なら何とか探して貰えるかと思い、藁をもすがる思いでおいでになったようです。
この帯は梅垣さんが高級なモノの中で数少なく織続けて来られた柄の1つで、白地のものと金地のモノがあるのですが、その白地のモノがちょうど店内に置いてございました。その方はやっと見つけたという安堵感からか、その帯を台無しにされた悔しさからか、涙を流されていました。
現物は金地のようでしたので、土曜日ですがすぐに梅垣さんに連絡を取ったところ、一本だけ残っているとのことですぐに送る手配をしていただけました。
こういうのをご縁というのですかね。
そのお姉様共々おいでになるとのことでしたが、多分間違いないだろうと思いますし、お役に立てて何よりです。
それにしても近年デパート呉服の人材の劣化は著しく、すべてではありませんが、モノを知らない販売員がキモノをよく知らない人達にとんでもないモノを売りつけていますし、本当にキモノをこれから着ていこう、買っていきたいと思っている人達が安心して買える売り場ではすでにありません。
お客様を育てていこうなどという視点はほぼゼロですし、あるデパートの特選売り場など、客を値踏みして、富裕層しか相手にせず、とてもそうは思えないキモノや帯をとんでもない値で売りつけることに目が血走っています。
買い取りのモノはゼロで、そのうえ販売経費はすべて問屋持ちですし、値引きをすればその半分を問屋の仕入れ値から引くという呆れかえる所業ですから、問屋も高く納めざるを得ず、結局良い物を安く売るなどと商いの原点など夢のまた夢です。
この会社自体、創業者理念などとうの昔に吹っ飛んで、右往左往するばかりです。
人を育ててこなかったことの報いで、今や我が母校の学生も誰も行きたいと思わないようです。
NCが退潮し、専門店は後継者難や情報発信不足ですから、デパートの呉服はある意味最後の砦ですし、真面目に消費者目線で取り組めば、大変今後有望な売り場ではないかと思うのですが、実態は最悪です。
こうしたことに鑑みるとこの業界は絶望的に安物志向になっていくのではないかと危惧され、真の高級品と言う範疇のキモノはドンドン無くなり、ろくでもない作家ものだとかの、高級では無いけれど高額品が一人歩きするのですかね。

その業者は弁償する義務がありますし、そのデパートも訴訟されてもおかしくない事例です。
何なら私が間に入って交渉しましょうかと申し上げたのですが、あまり事を荒立てたくないとおっしゃるのです。しかし結局それは泣き寝入りですしなんとかして差し上げたいと思っています。

情けない話ばかりで恐縮ですが、同業者としては恥ずかしい思いをいたします。
京都一、日本一誇りある商いだったはずなのに今や地に落ちてしまいそうです。
心ある者は奮起してキモノ文化のために尽力をいたしましょう。

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