精練という大事な仕事

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過日白生地産地の苦境をお伝えしましたが、我々が使う白生地は、普通は白生地問屋から手当しますが、白生地となって京都に来るまでにはいくつもの工程があって、その分業が成り立たないと上質な白生地も出来ません。

ただ良い生地を織るにはまずは良質な糸の存在が欠かせませんが、これからして将来危ぶまれていますが、その他の付帯の仕事もどれも大切ですが、無くてはならないのが精練の仕事です。

お蚕さんは糸を吐きますが、その糸にはフィブロインという芯に当たる部分とその周りにセルシンンという膠質の不純物が取り囲んでいます。

この状態を生糸と言います。普通はこの生糸を機に架けるわけで、織り上がった生地は白生地独特のしなやかさや光沢がまだありません。これを生機といいますが、これを精練の工場に持ち込んで、その不純物を洗い流すのです。まあいわば洗濯ですが、そのために大量のお湯と苛性ソーダが使われます。当然ですがそこそこの人も必要ですし、この工場を維持するにはそれなりの加工量が必要なのは言うまでもありません。
わずかな量でボイラーを炊けませんので、数がまとまってからしか仕事が出来ません。

かつてはフル操業だったのですが、近年あまりに数が減ってきているので最近は週4日操業のはずです。それでも維持できないと臨時に休んだりしていることもあるでしょうから、精練で凄く時間が掛かって、急いで作って欲しい生地などがなかなか上がって来ないと白生地問屋がぼやいていました。

このように織り上がってから精練するのを後練りと言いますが、織りのキモノや帯などは先に糸を精練してから織り込みますので先練りと言います。

また白生地産地で精練するのを地練りと言い、各産地にそれぞれ精練工場があるのですが、余りにも生産量が減っているので、今後如何にして維持していくのかが直近大きな問題となっています。

他の産地の精練場と合同すればと言う人もいますが、実はセルシンはすべて洗い落とすと言うことではなくて少し残すのです。それが各産地によってノウハウが違うので、他産地の精練ではその独特の風合いが実現できないのです。

新潟県に五泉市というところが有りますが、羽二重や塩瀬、夏物の絽の生地などを織っている白生地産地です。そこの老舗の一番今でも生産量の多い機屋が廃業をすると言うことで大問題になっています。

それを聞いたときにすぐにそこの地練りのことを思ったのですが、ただでさえもうわずかに6軒しか残っていないのに、そこが生産止めるととても組合で精錬工場を維持することは難しいのです。案の定がらがらの状態のようです。
こんな時こそ行政の力が欲しいのです。公営の工場にしてしまうとか搦み方は色々ありますが、このまま手をこまねいていたら産地の崩壊の危機です。

精錬工場も、織屋も機械設備が必要ですが、それも老朽化しているところも多く、今回の五泉の機屋もその問題で悩んだ結果と言うことでした。

私の紋付きも、お客様にご紹介している物もすべてそこの最高の重目の羽二重でしたし、他の織屋ではどうやら出来ないと言うことで今ある在庫がなくなるとおしまいになってしまう可能性があります。

そうした機械の更新などに数百万からどうかすると数千万の金が掛かるとなると廃業を考えるのもやむをえないという状況なのです。本当に頭の痛い問題です。

将来生産量が回復する見込みがあるなら思い切ってリスクを張るかも知れませんが、今のままなら逡巡するのは当然です。

行政も一事業者だけを支援することも出来ないので、今までは組合単位で考えるのですが、組合が機能していないので、まさに正念場です。

今年は変化という意味で廃業が増えるような変化では困りますが、世代交代期でもありなかなが平穏な一年とはならないと考えております。

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