たった3軒

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新しい元号が決まり、5月からスタートするわけで、そんな年に私も70才の節目を迎えるのも何かの縁かと思います。

令と言う字に、美しさや優秀を感じる人が今の時代にどれ程有るかは疑問ですね。かつては年賀状などでも連名で奥様を書くときに、令夫人様などと記したものですが、そうした人は少ないかも知れませんね。

やたらに日本の文化をどうのと上の方の人は宣っていますが、そんなに本当に思うならこんな時に黒紋付きでも着ればと思ってしまいますね。

その黒紋付きですが、普通羽二重という生地を使います。

この生地は経糸、緯糸共に撚りを掛けない平糸を使いますが、特に緯糸は水で濡らした濡れ緯という糸で織るので、緻密で丈夫な生地が織れます。ですから水や湿気が作用するので今は北陸地方が中心になっていますが、特に高級な物は新潟県五泉市で織られています。
かつては輸出羽二重と言って、広幅のものを世界に輸出していたのですが、今は小幅、つまりキモノ用の生地として織られています。

私の黒紋付きも、お客様からご要望があったときにお染するのもすべてこの五泉のあるメーカーの最高級の重目の物でした。
ところがその有名なメーカーが昨年急に廃業をしてしまい、結構騒動になっています。

特別なものを作っていたところだけに他のメーカーで代替できないという事情もあり、
他の産地に振ると言うことをされても、水や湿気などの関係から、同じ物は絶対に出来ないという結論に達したようで、そこで作ってた物が消えてしまうと言うことになりそうです。

実は五泉は、羽二重だけでなく、塩瀬、夏物の絽などの主要産地ですが、どの品種も需要が激減しており、1年前にはたった6軒しか残っていなかったのですが、そのメーカーが廃業したのに引き続いて、今月で後2軒減ってしまい、何と歴史ある五泉産地がたった3軒の織屋しか残らないという極めて尋常ならざる事態になっています。

勿論五泉市自体も主たる産業は他に色々あり、牡丹の生産日本一だとか、織物でも洋装のニットの生産が盛んですから、白生地の生産源が地域経済に与える影響は、そう大きくないのかも知れません。

ただ地域の特色有る文化としては何とか続けて、その文化を繋いで行って欲しいと心から願っています。

3軒で地元で精練が可能かどうか厳しく、他所でせざるを得ないとその風合いが変ってしまい、その文化が変質をすると言うことになってしまうでしょう。

しかしそれでも辞めないでいただきたいし、流通側ももっと危機感を持って白生地の販売促進に努力して欲しいと思いますね。

ご主人に黒紋付記か色紋付き姿を薦めるとか、色無地のお誂えを促進するとかお願いしたい物です。

ところが最近は色無地でも紋がいらないなどと平気で宣う販売員がいるそうですし、何をするにしてもまずもっと勉強していただかないと、消費者が何処で買えば安心できるかと言う声がいつまで経ってもなくなりません。

産地の未来は、勿論消費者の需要にかかっていますが、それには見識ある売り手の存在が欠かせないことは言うまでもなく、今後の専門店やデパートの活躍が鍵であることは言うまでもありません


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