悉皆屋の苦悩

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昨日今日と、手描き友禅を扱う京都工芸染匠協同組合の作品展が開催され、私も退院後の体を慣らすために行ってまいりました。

知人も多いので色々な話をして来ましたが、年々歳々彼らの苦悩は増すばかりで、その心情は手に取るようにわかります。

今は染匠などといいますが、通称は手描き友禅を扱う悉皆屋の集団が工芸染匠で、

色々な技法をそれぞれ得意とするような彼らが、製造問屋から預かった生地で専属の職人による様々な加工をしてキモノに作り上げ、問屋に納めて加工賃を得るというのが元来の本業で、在庫を持たず比較的リスクの小さい職種です。

ただ彼らが多くの手描き友禅の職人を守ることになり、彼らがいないと本物の手描き友禅作品も作れません。

製造問屋とは口で言っていても、彼らの存在無くしては成り立たないのです。

かつては作れば売れるという時代もあって、問屋も活発に染出しをするので、悉皆屋も忙しく、職人さんにも山ほど仕事が入っていて、みんながwinwinの関係でした。

ところが現在京友禅の手描きで作る点数は、最盛期のたった0.3%しかなく、問屋の染出しも激減し、悉皆屋は職人さんに仕事が出せなくて、そのままでは面倒が見られません。

それでは職人さんは食っていけないので辞めてしまいます。

それで致し方なく自分で白生地を仕入れて、自ら作品を作ります。

こういうことを生地を潰すと言いますが、これが当たり前になってくると、作ってもそうは売れないので在庫ができ、お金が寝ます。

頑張れば頑張るほどお金が足りないから、家を担保にして金を借りてやらざるを得なくなります。

作っても売る手段を持たないので、結局問屋に頼ることになると、問屋は染出しをしないで、悉皆屋の持つ在庫を利用しようとします。

こうなるともはや悉皆屋ではなく潰し屋です。

売るために直接小売り屋の展示会でコーナーを貰って自分で販売に出ているようなところもありますが、なかなか厳しいようです。

最近父が営んでいる悉皆屋を継いでも良いという奇特な若者も散見し、それは大変喜ばしいのですが、問題は職人さんの高齢化と後継者難で、いずれ物理的に作れなくなる時がやってきます。
これをどうするのかそれぞれが知恵を出して頑張っているとはいえ、キモノが売れなければ色々な絵は描けません。

リサイクル市場で過去のいい仕事をしていたころのものがどんどん出回り始めると、益々販売上厳しい事態となります。

悉皆屋がいないとモノづくりができないこともわかってはいながらその面倒を見てやろうという問屋も極めて少なく、ほとんどのリスクを被せようという事では早晩終焉が見えてきます。

泰三は元来製造問屋でしたが悉皆屋を使わず、専属の職人さんたちでものづくりをしてきましたが、京都ではこうしたフルリスクでものづくりをする問屋はほぼ皆無に近いのです。

そして私は近年流通も改革して、卸先の小売店などを飛び越えて消費者に訴えたので、

それが功を奏して高級なものを作り続けてこれたのです。

ですから売れないで呻吟する今の悉皆屋も直接消費者に販売するという事を模索していますが、現実は色々な知識にも乏しく上手くいかないようです。


なぜこれほどまでに販売が落ちてしまったかということは再三再四述べていますが、悉皆屋もNCのろくでもない催事でひどい売り方をしてきたところもあり、所詮は自分たちで売れなくしてきたという側面があることを忘れてはいけません。

ただただ売りたいがために小売りをしても必ず失敗します。

初心に還り自らの文化力を高めるようもっと勉強をしてほしいというのが私の偽らざる思いなのです。

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