不調のナショナルチェーン

カテゴリー:

過日ナショナルチェーン店Sの創業者Kさんがお亡くなりになりました。
何と100才でした。

当社はその方に私個人が可愛がっていただいたお陰でしばらくお取引があったのですが、現在の社長に替わってから、経営方針がずいぶん変ってしまい、上物問屋はほぼ全社手を引きました。

キモノを良く知らない社長は、安物も上物も区別が分からず展示会などでは当社のモノもとんでもない扱いを受ける上に呆れ返る倍率で、驚くばかり高価になるので貸すのを辞め、取引を辞退しました。

チェーン展開される以前の専門店だった頃の方がはるかに良い物を扱われていましたし良い客様もおられたと思うのですが、売り上げ至上主義になって全国に店を作り始められてから経営スタイルも変り、伸びていく間は良かったのですが、下がり下がり始めてから打つ手もなくずるずると業績内容が悪化しているようです。

店をたくさん作ると売り上げも増えるでしょうがそれ以上に経費がかさむので、結局ろくでもないキモノや帯を高く売る商いになってしまい、店外催事などで5倍から6倍もの値をつけることになってしまいました。
当初はキモノ愛好家を増やしたいと言う思いで店をたくさん作るのだと言うことでしたが、最初の頃は高度経済成長に乗っていたので、売り上げも順調に伸びていきました。
まあ余り将来のことをよく考えもしないで、フランチャイズにもしないで自店を拡大して行ったのですが、数字が読めていないなと思ったのも頻りでした。

すべての仕入れなど統括を東京でするというセンターキッチン方式でこれも無茶苦茶のマーケティングだと思っていました。地方により売れるきものも違うのに、同じモノで全国展開していったのですが、各都道府県に1軒ならまだしも、同じ軒で数店舗出すと商圏がかぶり始めますし、必ず既存店が落ち始めます。

そうなった時に打つ手が単純でただただ閉店を重ねるばかりですので、売り上げは落ちるばかりで赤字が慢性的に続きます。ビジネスモデルを変えなければならないのですが、貧すりゃ鈍するで、その時間的余裕もなく、今では最盛期の2割以下の店しか残っていません。

ここだけでなく総じてNCのビジネスモデルは何処も同じですから、何処もみんな業績不振ですし、かつて一番大きかった所など惨めな有様でとうとう親会社から他所に売り飛ばされてしました。

親会社からの天下りの超無能社長が連続した結果で当然と言えば当然の帰結です。超構造不況業種に先の読めるような優秀な人材などいるわけもなく、しかも客を騙すような商いを続けてきた報いです。

ただ販売数量は年間通してやはり馬鹿にならないわけで、そこが不調だと言うことだと、産地の生産に大きな影響を与えます。まあある意味キモノ業界の必要悪のような存在だったのです。

もうかつてのような隆盛を取り戻すことは100%不可能ですし、残った店を如何に経営するかということですが、数字だけ追ってきた経営では多分どうしていいのか全く分からないでしょう。
独立採算でそれぞれに個性ある店作りをさせるというのは絶対不可能でしょうし、この先どうなるのか色々取りざたされています。

専門店もデパートも不調ということだと、やはり非常に心配な状況が続きます。脱呉服に動いている問屋やメーカーも散見しますが、今年は特に心配な1年のような気がしております。まあ色々な意味で変わり目なのだろうと思います。

濃い地のキモノ

カテゴリー:

有名老舗問屋の廃業の一方、無料着付けと良いながらキモノを販売する会社の決算が好調だと聞いて、真面目な物を真面目に売るところが駄目で、そうでないモノをとんでもない値で売るところが儲かっているという現実には暗澹たる思いです。

結局テレビの力や発信力で、お客がさらわれて、初心者が本来行って欲しい店には行かないということですから既存店の発信力不足に尽きるわけです。

情報社会での発信不足は致命傷になりかねません。
発信力のあるお客様が代わりに発信されると言うこともあっても、自らが恒常的に発信できなければ続きませんね。

ところで近年キモノを着たいという人はかつてに比べて格段に増えていると思います。
ただ実際に実践している人はたとえば茶道を嗜んでいるとか、伝統文化に関わるお稽古事、あるいは歌舞伎観劇などにいそしんでいるような人以外は、普段に着ると言う人はまだまだ少ないように思いますし。キモノ初心者は相当な数だろうと思います。

普段に着るような人にはリサイクル族が多いのも事実ですが、非常に取り合わせの悪いはっきり言ってどうかなという着こなしをしている人が多く残念な思いです。

多分全く独学なのでしょうが、地色にしても自分にはどんな色が似合うんだろうとか、正しくアドバイスしてくれる人もいないのかも知れません。どんな着方をされるのも自由と言えばそうですが、小物との取り合わせも含めて色彩的どのように映るかということも勉強されてはいかがでしょうか。
私も配色に迷ったときには配色辞典という本などを参考にしています。そんなに高くない薄い本です。キモノだけでなく洋服を着る時にも参考になります。

初心者が多いのと、時代の流れかも知れませんが近年どういうわけか薄地を選ばれる方が多くて、濃い地のキモノの動きがとても悪いようで、現実に私どもでも濃い地の訪問着が残っています。
我々物作りをするモノは地色にはとても悩みますが、お洒落なこうとな色というとやはりひねった濃い地を選びます。
濃い地の色は引き染めでも大変難しく、高級なモノは何度も色を重ねて行きますのでそういう仕事をしたキモノの濃い地はむっくりした味わいがあります。

NCに出ているペラペラの生地で透けるのをごまかすための濃い地とは全く違うのです。

濃い色は締まって見えますし、顔も白く映ります。色が濃いから濃い地は嫌だというのは間違いです。
次回の泰三の会にはそうした訪問着をお持ちしますので、1度お袖を通して見てくださいconv0001.jpg

東京の老舗問屋の廃業

カテゴリー:


先日とても驚く知らせが飛び込んできました。

日本橋で3代にわたり、有名老舗問屋として名のあるHというところが2月末をもって廃業するということでした。

この問屋は主に専門店筋のキモノや帯を扱うところで、東京だけで無く関東一円の専門店や、京都にも支店があるので、近畿圏にも取引している専門店があります。

キモノ業界は20年くらい前からバブル景気以降の後退で、次々と倒産が始まり、日本橋の専門店向きのキモノを扱う専門問屋はどんどん姿を消していき、この問屋がある意味最後だったのです。

仕入れ先への支払いは保証するとか言っていますが、メーカーにしてみるとまた売り先がなくなるわけですし、専門店にしてみると借りる先がなくなります。

取引内容の悪い行儀の悪い専門店はいよいよ淘汰されていきますが、お客様は困られるでしょうし、ますます消費者が求めたいようなキモノを見る機会も減っていくでしょう。

昨年秋から相当に業績が落ち込んでいますので、相当悩んだだろうと思いますが今回の決断に至ったのでしょう。

私は社長とは昵懇の仲でしたし、良く知るものが次々と現場から去って行く事は極めて寂しい思いをいたします。

社会の変化に如何に対応するかと言うことに何ら手を打てなかったということかも知れませんが、旧来の商いが機能しなくなっているという現実に、これと言って抜本的な手を打てないままに推移し、自ら首を絞める消費者の信用を失うような商いに走ったことが今のような苦境の原因の1つであることも否めません。

デパートでもひどい商いをするようになって来ましたし、如何にして消費者の信を得るかと言うことはとても大きな課題です。

私はそう思って頑張って参りましたし、真面目な売り手の一因としては辞めるに辞められません。
作り手の高齢化でもう5年くらいで良い物はつくれないだろうと業者間で互いに言っているような現実ですし、人づくりは手遅れに近いかも知れませんが、すぐにでも何らかの対策をこうじなければ、手描き友禅や西陣織の歴史が終わってしまうという危機も見えてきます。
良い物が作れる間にと言うことで梅垣さんも歯をくいしばって頑張っておられますが、本当に今のうちに買っておかないと良いモノが買えなくなると言う事は益々現実味を帯びてきました。

知人友人が次々とキモノ業界から去って行くのはなんとも寂しい事です。

我々夫婦は東京との往復を18年も続けてきたのですが、その間には家内が入院を余儀なくされる病気になったり、私がC型肝炎で入院して、インターフェロン治療をしたり(お陰で完治しましたが)、体調を崩すことが何度か有ったせいで、東京のいくつかの病院やクリニックに定期的に検診や検査を受けに行っております。

そんな事情もあって、東京に行く時に、同時に泰三の会を開催しようと言うことになりました。
3月にもそんなわけで東京に行かなければならない事情がありますので、2月に引き続き泰三の会を同様に開催させていただくことといたしました。

日程は3月16日(土)、17日(日)です。場所も時間も同じ銀座東武ホテル地下1階
タブローの間、両日共に12時から6時までです。

ご来場御希望の方は例によって来場希望日時をご予約いただくと幸いです。
また同時に何か特別ご覧になりたいモノがあればお知らせ下さい。

私どもで作ってないものでもお取り寄せしてお見せできるように手配いたします。

徐々に予想通り産地状況は縮小低迷の一途のところが殆どですし、寂しい話しか聞こえてきません。

着る人は都会部では増えていると思われますが、そのことが直接購買増には結びつかず、逆にどんどん減って行きます。

流通在庫も相当な数があるだけに、それを消化して行くまでにも相当時間が掛かり、需給バランスや、流通在庫も適量となるまでに相当時間が掛かると予想されますので、その間職人さんの高齢化と材料の劣化や品薄状態が蔓延しますので、真の上物は姿を消していく事になると思います。

まあある意味私も達観していますが、それでも上質な物作りにはこだわっていこうと思う次第です


価値観の急激な変化

カテゴリー:

ここのところきもの市場は大変低迷していて、色々な催事は集客が少なく購買単価が下がっていて、大苦戦です。特にナショナルチェーンの落ち込みは歯止めがきかなくなっている様な感が有ります。

しかしつらつら思うに、これは単に景気が悪いとかという話で済まされない価値観の変化が著しいのではないかと思います。

借りて済まそう、古着でも充分と言う人が益々増えているようです。
キモノだけでなくアパレル業界もどんどん縮小しており、レンタル市場も拡大しています。

キモノは洋服とは違うという人もいますが、服飾文化という意味では共通した因子を持っており、普段洋服で生活しているキモノ初心者などがキモノを見る目は、どうしても自分の好きな洋服の色とかに影響を受けるでしょうし、価格的な問題もあって、旧来の価値観がだんだん通じなくなっている様な気がします。

キモノを自由に着たいという人も増えているような気がしますしSNSなどで自分のそういう着姿を発信している人も少なくないですし、そういう人達の影響力も小さくないと思います。

ただ難しいのは今もまだ旧来の価値観を愛でる、良い物とは何かが分かっている様な人達も少なくない訳ですから、1度に何かが変ると言うことでなく、価値観が一段と多様化して行くと言う課程に有るのだろうと思います。

ですから非常に作り手としても難しく、売り手がそうしたトレンドを把握して指示して行かねば、着る人が求めるモノと益々乖離し、リサイクルに需要が流れてしまいます。

私は父以来のモノ作りの方向を変えることはいたしませんが、ただ最近絵羽ものの需要が相当減っているので、どうしても付下げ、あるいは仕立て上がれば軽い訪問着となるような物作りを中心に考えなければならないのかと思うのですが、泰三しかないような豪華なモノを求める声もあるので悩ましいところです。

服飾だけでなく、今世の中がまた変りつつあり、若い人達の中にはやり甲斐を求めて、必ずしも大企業や役所などに行かないという人達も少なくありませんし、そうしたパワーが劣化した組織の再生の源になるのだと思います。

金だけではない心豊かな人生を送るためには若い間に耳目を開いて色々な事を学ぶ、つまり教養を積むことが大事だということを肝に銘じて貰いたいモノですね。


月別 アーカイブ