本物の持つ力

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過日東京で子供たちの前でキモノに親しむという演題で言わば授業をしてきました。

幼稚園児、小学生低学年、高学年と1時間ずつの3コマですが、大人に話すようにはいかないのでどのように進めようか悩みに悩んだのですが、子供たちが興味を持つのは動画や写真でしょうし、何よりも本物のキモノを見せるのが一番だと思い、
幼稚園児には当家にある子供用のキモノ、小学生には泰三の作品をいせるべく用意しました。

大日本蚕糸会が作成したDVDで繭から糸になるまでを説明して、糸からきものになるまで
を業界が作成したDVDを早回ししながら解説しようとしたら、そのDVDが使えない形式だとかでちょっと焦りましたが、以前から使っている画像を刷りだしたもので、かいつまんで説明をし、キモノ一枚がどれほどたくさんの人の手を渡って作られるかを分かってもらえたと思います。

頃合いを見て、実際にキモノを希望者に羽織ってもらうことにしました。
子供たちにはやはりワークショップ形式が理解しやすいだろうと思いますし、
今までの他の授業も、舞、鼓、太鼓、笛、茶道、長唄、三味線などなどのワークショップを取られています。


高学年の子に、泰三の最高級の振袖を簡易に着付けしてもらったのですが、目が輝き本当に嬉しそうでした。小さな子でもやはりその美しさはわかるのでしょうし、そうした振袖など普段全体見ることもできないし触ることもできないものを着られたという思い出はきっと大人になっても覚えていると信じます。

人の感性に訴える美の力は言葉や文字では説明ができないでしょうし、そうした感性を身に付けるのは、そうしたものに見たり触れたりすることです。

そういう意味でもこの子供たちは親に感謝することでしょう。有料で20回の文化に関わる授業を授けられるのは、きっと大人になったときにとてもいい影響を受けたことに気が付くでしょう。

振り袖姿を周りで見ていた子供たちもみんな綺麗だと感心していましたし、その子供たちにもなにがしかの思い出となってくれればと思います。

文化力を高めるには、もちろん学識があればあるほど良いには違いありませんが、机上の空論と同じで、それだけでは自分の生きた力つまり真の教養とはなりません。

本物に触れる、見るなど現場の力が重要です。
特に美しいものを見ることは大切ですね。

日本伝統文化に対しても小さなうちに色々触れておく大人になっても違和感なくそうしたものに積極的に触れるようになることでしょう。

泰三のキモノが世にいい影響を与えてくれるだろうと、作り手としては当然ですし、期待したいものです。


日本文化の啓蒙

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来週東京で着物についての話をするのですが、対象が小学生高学年、低学年、幼稚園児ということで、今までいろいろお話させてきた中で一番難しいと思いますし、いまだにどう話そうか悩んでいます。

子供たちに文化を教え伝えて行かないという思いから立ち上げられた文化教室で、能狂言、茶道、邦楽など日本の固有文化をワークショップ形式で学ばせようということで、私にある方からのご依頼があったわけです。その時点ではまだ店があったし、こんなに難しく考えていなかったので気軽に受けてしまったわけです。

ただ近年は親がキモノを着ない家も多く、和室もどうかするとない家が多いので、およそ和文化とは縁のない子供たちも多いわけですから、こうしたことで興味を持たせるというのは有意義です。

どちらかというと親にやらせたほうがいいのではないかという思いもしますが、小学生の頃にそうした体験をさせるのは後世にとてもいい影響を与える可能性があります。

私自信両親が歌舞伎が好きでしたから、小学生の頃から南座に歌舞伎を見に行っていたのを覚えていて、かつての名優、つまり以下活躍している人の父や祖父の舞台を結構見て来たので、大人になっても和文化へ特別な気構えなど全く必要なく、何でも受け入れてきました。

先斗町のお茶屋さんに小学生の時に上がったのをずっとおぼえていましたし、やはりそうした時期に親が何を子に与えるのかということが子供の成長に大きな影響を与えます。

要は親の趣味が子に伝わっていくことがやはり多いですから、今のような住環境やな茶道一つ知らない、キモノを着ないという家では日本文化を教えていくことは極めて難しいのが現実です。

そうしたことに危機感を覚えたこの教室の主催者が始められたわけで、親もやはり自分たちでは教えられないから、有料ですが年に20回もの色々な体験をさせようというこの教室に我が子を入れたのでしょう。


今の日本で最もだらしないのは秀逸な固有文化を日本人自身が良く知らないという、ありえないようなことを、何とも思わず年を重ねてきた大人が山ほどいて、その連中が人の上の立場でいるという噴飯物の現実です。

外務省の役人が日本文化を語れないだとか文化庁の役人も無芸大食だとか、情けない無教養な役人が激増したことは世界に恥ずべきことです。最高学府を出た連中がが次々と問題を起こしたりするのも、結局点取り虫教育ばかりで大学まで終わってしまい、人として大事な教養を身に付けるどころか、庶民の声も何も聞けないマザコンのまま官僚になったりするという憂慮すべき現状なのですが、政治家がもっともっと無知、無恥と来ているので全く改まりません。
世界からどんどんおいてけぼりになりながらも気が付かない超無能な政官の輩は今さえよければ良いのであって日本の歴史や文化をただしく認識できていないことも恥とも思っていません。

本来大学の間にでも自らの文化力を高める努力をすべきだったのですがそれもままならず、近年の外交力ゼロというのも相手国との交渉する力がなく教養が無いから言葉がなく説得することもできません。

次代を担う子供たちが是非とも日本文化に目を開き、昔の人が築き上げて来た大切なものを守り、次世代に伝えて行って欲しいと願っています。

自国の文化を理解しないのに他国のことはわかりません。

お互いを認め合い理解を深めるためには、より幅広い教養を積んで造詣を深めることが大切だと思いますし、世界に出て活躍するためにも日本のことをもっと知っておかねばなりませんね。


予想通り

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先日業界のモノづくりをする友人と話をしていたら、彼自身も健康上の大きな問題があったそうですが、その店の作品を作る大事な職人さんもほぼ70歳を超えて、健康を害する人が増え、何人も入院したり退院したり、と思ったらまた違う人が入院したり、要するに加齢による健康障害が大きな問題となってきました。

昔のようにたくさん仕事があれば責任感ややりがいで頑張れるのですが、あまりに仕事が少なく、しかも体調を壊すと、そろそろ仕事を上がろうという人が出てくるのは当然です。

難しい仕事をする気もなくなり、かつてできた仕事を断るとか、質も落ちていますし、各分業制の中で上物を作れる人があまりにも少なくかつ高齢化し後継者が無いというのが当たり前に言われる昨今です。

業者として継ぐ者が仮にあっても作り手がいなくなるのは必至です。
どこまで頑張れるかわかりませんが、今でもそうですがインクジェットでの生産が
当たり前となるので、リサイクル品の方が質の良いものがあるというのがこれまた当たり前になるでしょう。
そうしたことになると私は予想はしていましたが、どんどんそうした動きが加速すると考えられます。

何でこんなことになってしまったのかと今更反省したりあげつらったりしても
意味もないのですが、近年どんな世界でも同じで、反省もせず謝らず、改革もせず、同じことを続けます。

もちろん知恵のある人はそれなりにリスクを貼って独自の世界を構築しようと思っているようですが、極めてそういう人は少なく、断末魔を叫びながら多くの人が消えていくことになるでしょう。

私はずっとずっと以前から人と違った道を歩くことでやりがいを見つけられ、上物の生産を続けて来れ増したし、そのおかげで良いものを価値ある価格で提供でき、いわゆる三方良しを実現でき増したました。苦しかったけれど楽しく仕事をしてこれたし今もそうですが、早くに手を打ったことが奏功しています。

ただ近年日本は明らかに貧乏になってきて文化にお金を投じる、特に男が減り、いつも金儲けしか頭にないような輩が激増し、明らかに社会環境が変わってしまったとしか言いようがなく、この先のものづくりの支えとなるパトロンの存在があるかという不安も増し、
益々生産は細るでしょうが仕方ありません。

まあこの上はどこまでできるかは別にして、楽しんで作ったり売ったりしていければと思っています。
結局わずかな人の思いや力では大きく道を変えることは出来ませんし、なるようにしかならず、その状況を把握しながら変えられることは変えて行くということでしょうか

歩引き

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盆明けから天候が不順で、夏物衣料の販売が不調です。

梅雨寒の後に急に酷暑が来て、と思ったら秋雨前線でまた梅雨のような天気が続いていますから、浴衣を着て遊びに行こうなどとなかなか思えませんね。

当然業界自体の雰囲気も暗く、厭世観が漂っています。

秋からの商戦に期待したいところですが、キモノ業界は構造的な問題を抱えているのであまり期待できないと思われます。

そもそもキモノを着たいという人が増えているにもかかわらず、購買が減少しているというのには、レンタル市場やリサイクル市場の台頭ということがあっても、業界自らが売れなくしているような商いをしてきたことに起因しているわけで、いわば自業自得です。

買いたいと思っている人がどの店に行けばいいのかなどと思われるのは、現実にとんでもない押し売りをしたり、知識の無い販売員が口から出まかせでとんでもないものを売りつけようとしたり、安心して買えるところがわからないという他の物販業界ではありえないようなことがまかり通ってきたからです。

全体でみれば真面目な店や業者の方が多いでしょうが、全国チェーン店などがそういう商いをしてきたことで業界に対する不信感は広まり、どこもそんなことをするように思われたりするのは心外です。

結局流通業の人材、人間性の劣化は著しく、戦後この業界で創業し頑張ってこられた先人たちは切歯扼腕の思いでおられることだろうと思います。

私も父の遺業を継承すべく作ることにも売ることにも苦労を重ねてきましたし、後ろ指をさされるようなことをしない、正義を貫くということに腐心してきたつもりですが、いつまで経っても不公正な商いがはびこり、業界人としてずっと嫌な思いをしております。

悪質な販売店をのさばらせてきたのは、そこを応援してきた問屋に大きな問題があるわけで、つまり流通のかなめの問屋の質の低下が今日の業界の苦境の根本の原因だろうと思います。

私も京都にいて、この業界に身を投じて半世紀近くになるので、そうした室町の問屋の主や番頭の言動を見てきましたが、創業者の人たちは個性豊かで、実際色々な人がいましたが、時代背景が良かったせいもありますが、総じて仕入れ先や職人さんなどにも思いやりや気遣いをされる人が多かったように思います。つまり親分なわけです。

ところが次の代、あるいはその次の次の代となって、果たして創業者の理念がどれほど
理解されているのか極めて疑問です。

仕入れ先を大事にすることが利は元にありの根本ですが、曲解した連中は正反対のことをします。

例えばいまだに支払い時に歩引きということをしているところがたくさんあるようなのですが、従来は手形取引がほとんどだったので、現金を早く欲しいところが頼んで少し値引きしてでも払ってもらえないかということから始まった習慣で、関西の繊維業者に多かったようです。

それがいつの間にか支払う側が勝手に歩引きと称する支払値引きをある一定の率ですることが常套化していて、意味が分かりません。相変わらず手形で支払いながら歩引きをするというのは、理屈に合わず、まあはっきり言って下請法違反ですし、訴えればそれなりのとがめはあるのですが、受け取る側もどうせ値引きされるのだからその分高く納めるということを当たり前のように享受しているので、そうした悪習慣が無くなりません。

結局仕入れコストがあがり、最終的には小売価格に転嫁されるわけです。

今年こうしたことを改めようという機運が盛り上がり。取引条件改善に勤めようと動きはあり、少しはましになったところもあるようですが、言い出しっぺの企業が相変わらず歩引きを敢行しているとのことで空いた口がふさがりません。

作り手は問屋がそれなりに役目をはたしていないので、問屋は小売店が同じように機能していないので、共に前へ前へ、つまり消費者に向かって行こうという動きが散見しますし、良いものをリーズナブルに販売するという意味では私はそうあっても良いと思いますし、私自身がそうしてきたわけです。

ただ小売りを本当にするならそれなりに勉強をしないといけませんが、派遣のおばさん任せのようなところは、続かないと思います。

自らの商品に自信がない、キモノという文化を理解していない、知識が無い、キモノを着る背景の伝統文化への造詣が全くないというようなところでは消費者に失礼です。

本当にやるなら命を懸ける気概が必要だと思います。

売れなければ作れないのですが、どうやって売っていくかということに関しては色々と変化していくのだろうと思います。だからこそ余計に一生懸命勉強して欲しいものだと老婆心ながらつくづく思うこの頃です。

今年のお盆休みは、通年なら16日で終わるところ、17、18日が土日となるため、大方が18日までに休みということで、やや長めの休みとなりました。

旅行や帰省など移動された方々も多かったでしょうが、梅雨寒の後の酷暑到来と、台風上陸など異常気象で往生された方も少なくなかったと思います。

そうした天候のせいもあって、夏物衣料なども格別に今年は売れていないようで、キモノ業界でも浴衣が本当に売れないという嘆き節が聞こえてきます。

季節もの商品は天候に左右されることが多く、浴衣でもあまりに暑い日が続くと着る人も減ります。
夕方になってやや涼しい風でも吹いていると、着てみたいと思われるかもしれませんし、そういう意味で今年は物販には酷な年だったかもしれません。

お盆も終わって秋の到来となるはずですが、残暑があまりに厳しいと今度は秋物の商品が売れないということですし、近年の異常気象はモノづくりの計画を狂わせます。

デパートで売っているような、質の悪い綿やポリステルなどの浴衣ではなく、良質な綿に手捺染で染め上がった浴衣への志向は根強くあるのですが、新品は仕立て代なども入れると結構な値になるので、そういった質の良い物のリサイクル品は人気があるとのことです。

そうした事実に鑑みると、消費者はやはり質の良い物を求めているのですから、新品で良質でリーズナブルなら売れるということだろうと思います。

私が実行した流通改革を成して、低品質のものが高くなるような今の全産業中最悪のカスのような流通構造を改めて消費者が求めているようにすればまだまだ実は捨てたものではないと思っているのですがね。

安物屋ほど嘘をつきろくでもないモノづくりに箔を付けようとしますし、それがまかり通ってしまう情けない世の中ですが、作り手である限りその良心は持ち続けてもらいたいものだと念願しております。

これから先数年がキモノ業界の未来を占うことになるでしょう。

この業界の栄枯盛衰をその渦中にあってずっと見続けて来た私としては非常に興味深いのですが、良い方向に変わるとは思えないのが残念です。

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